
広島の先進7か国(G7)首脳会談に参加したドイツのショルツ首相は、独メディアとのインタビューで「全体として成功だった」と総括しました。同時に北大西洋条約機構(NATO)とロシアの対立がエスカレートすることへの強い懸念と、自国の独立に経済が欠かせないとの認識を示しました。
これらの認識は隣国フランスのマクロン大統領とも共有していることで、マクロン氏なG7後、ロシアだけでなく中国との対立を西側が深めることへの懸念を表明しました。そもそも仏独は英米とは異なり、物事を善悪の白黒に単純に分け、悪を叩くという発想からは一歩引いた多文化共存主義を追求する国でもあります。
ショルツ首相は「ドイツは可能な限り、ウクライナを支援する」としながらも、戦闘機納入には依然として消極的です。同氏は、他のG7諸国がF-16戦闘機を利用可能にするかどうか、またいつ利用可能になるかについては明らかにできないとの認識を示しました。
理由は、まず第一にパイロットの長い訓練が必要で納入に関する決定は最後の段階で行われ、まだ決定されていないが、「そもそも戦闘機の納入は中心的な問題ではない」と述べました。
「むしろ、ウクライナに対する世界的な支援をさらに拡大する必要があり」「私たちはここに多くの国を招待し、具体的に話し合いたいと考えていた」と述べ、G7諸国の総人口をはるかに超えるインドを初め、急成長を遂げるグローバルサウスの国々の意見を聞かずして何も決められないとの認識を示し、世界的なコミットメントの重要性を強調しました。
その上で、「ロシアとNATOの間の戦争へのエスカレーションを防ぐことは依然として共通の懸念だ」として、単純なデカップリングを回避するため、「慎重さが重要」と述べました。しかし、その慎重さはウクライナ支援を遅らせたことも事実で国内外から批判を浴びました。
今回の会議に向けた準備段階で、非常に集中的な議論の中で、世界の中で自分自身をどのように位置付けたいかという問題に関して共通の立場を導き出すことができたとショルツ氏は述べました。さらに全ての国々は「協力関係を強化し、平和な世界を築く」チャンスがあると強調しました。
「それは中国にも当てはまる。中国の経済的成功は誰もマイナスとは考えず、将来的には中国国民にとっても繁栄が可能になるはず」として、国境の力による侵害は許されないが、分離主義には反対することを明確にしました。
そして、より自立した経済を訴えるショルツ氏は、ドイツとヨーロッパがより独立するために経済的に多様化する必要性を強調しました。「すべてを最も安価に入手でき、サプライヤーを 1 つだけ、または 1 か国か 2 か国に集中できた時代は終わった」として、変化の調整に必要なプロセスには長い年月がかかるとの認識を示しました。
ショルツ氏はウクライナ紛争以来、自分の政治信条を最も大きく変えさせられた国の指導者ともいえます。
ロシアや中国との経済関係を保つ外交政策の大幅な変更、国防費の過去にない増額、紛争地域へのウクライナへの武器供与は、一国平和主義とヒューマニズムを標榜する社会民主主義の政治家としては、ありえない変化を受け入れていることも無視できません。
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