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 中国の習近平国家主席がモスクワを訪問し、プーチン露大統領と首脳会談を行うなど、中露の接近が注目されています。ロシアのウクライナ侵攻から1年が過ぎ、じっと様子を見ていた中国は、少しづつ動きを加速させているようにも見えます。

 そんな中、昨年、ロシアの生産拠点を閉鎖し、撤退を決めた欧米企業に続き、日本も自動車産業を中心に撤退の方向にあります。無論、西側諸国からの制裁の対象になっていない分野では、欧米企業を中心に今もロシアで活発な活動を続けていますが、誰もが注目しているのは撤退後の大規模工場がどうなるのかです。

 最近、専門家の間で指摘されているのは、外国企業の徹底後の巨大生産ラインを中国企業が引き継ぐ可能性が高まっていることです。ここで外国企業の工場を受け入れながら、技術を搾取して実力を蓄えてきた中国と化石燃料に頼って技術力で劣るロシアの産業力の違いが浮き彫りになっています。

 昨年4月、ロシアでのビジネスの縮小、撤退を決めた日米欧企業は広範に渡り、自動車業界ではトヨタ、フォード、GMなどが次々にロシア向け輸出を停止したり、生産拠点からの撤退を決め、ビジネスを縮小しました。航空業界もボーイングもエアバスもロシア向け支援を1時的に中止しました。

 エクソン、BP、シェルなどエネルギー関連企業もロシアでの事業を放棄しました。ゴールドマン サックスなど金融大手も早期にロシアからの撤退計画を発表しました。話題になったのはマクドナルドが撤退した後の店舗でロシア企業が、そっくりのサービスを展開していることです。

 これだけ大規模な撤退や縮小、輸出停止などが起きたロシアで今後、何が起きるかは誰もが注目している点です。国家が信用を失うことは大きなことで、ロシア政府にとって大きいのは大量失業問題です。そこで雇用を確保するためには撤退した企業の穴を埋め、雇用を守ることが重要です。

 無論、そこに注目する中国も慎重です。理由は世界制覇を国家目標に掲げる中国にとって、国際的批判による経済活動の孤立は得策ではないからです。ロシアと手を組むのも慎重で中国の大規模なロシア進出にはそれなりの理由も必要です。

 つまり、ロシアと固く手を組みことで得られるものもあれば、失うものもあるということです。孤立したロシアを見て、同じ運命を辿るわけにはいかないからです。そこを慎重に見定めながら、ロシアと西側諸国の対立から漁夫の利を得る道を探る中国が今後、どう動くは注視する必要があります。

 自動車メーカーはロシアからの撤退で各社約1,000憶円の赤字を計上しているようですが、その生産工場をタダ同然で中国が引き継ぐという単純な話でもないようです。EV市場で先頭を走る中国としては未来を見据えて、EVの生産のサプライチェーン拡大でロシアを利用できないか探っている可能性もあります。

 それにかつて東西冷戦でアメリカと技術を競ったロシアが石油に頼るだけの国に成り下がっている状況を今後も脱しないとはいえないかもしれません。ロシアや中国から見た世界の風景は、われわれが見ている風景とはかなり違うのは確かでしょう。

 はっきりしていることは、進むグローバル化は止められない一方、国家主権を確保するための必要条件を満たすことに各国が注力する流れも変わらないことです。政治と経済は異なるロジックで動いているわけですが、同時に常に影響し合っていることが世界で表面化していることを注視すべきでしょう。