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 日本にグローバルスタンダードのテーマパークを作るためのプロジェクトに関わったことのある筆者は、150憶円を超える資金繰りのためにアメリカ、英国、フランス、ベルギー、ドイツをまわった。彼らが意思決定するために必要な条件は異なっていたが、そこで日本文化との違いを痛感させられた。

 基本的に、大きなプロジェクトは自治体の協力なしには実現ができないため、どこに行っても共通して求められたのは。誘致を進める自治体の首長のラブコールのレターだった。実はこのプロジェクトは、鍵を握るその首長の決断がなかったために途中で挫折した。

 ここで思い知らされたのは無論、日本の慣習を国外の投資家に理解させられなかったことが大きかったが、何が起きたかといえば、実は首長が利益誘導の片棒を担ぐことを極端に恐れていたことだった。求めたレターの内容は、進めていたプロジェクトに対して、首長として歓迎するというもので、当然、決定は市議会の決定によるという但し書きがある物だった。

 つまり、自治体がフルサポートを確約するから投資してくれというレターでもなかった。通常、投資には様々な書類が必要だ。たとえば、そのプロジェクトは米系大手コンサルティング会社の数百ページに及ぶ事業の実現可能性を調査したフィジビリティスタディもあった。

 投資家が懸念する材料を一つ一つ潰していくため、億という資金を費やした。結果的に首長のレターが最終決定の鍵を握ったが、国際性のない首長は二の足を踏んだ。後で分かったことは首長自身が政治は利益誘導と勘違いしていたことで、レターも金次第だったのかもしれない。ただ、そんな領域に足を踏み入れるつもりはなかった。

 実は日本型意思決定も大きく影響していた。それはたとえば、最終意思決定を持つのはトップに立つ首長や議会の権限ということでもなく、全ては根回しによって醸成された「空気」で物事が動くことがなかなか海外の投資家には理解されなかったことだ。

 結果、根回しの期間は当然、水面下で行われるので透明性もまったくなかった。想定外の利権を漁る個人や組織も近寄ってきた。コンセンサス重視の日本独特の空気を重視する意思決定スタイルは、なかなか海外では理解されない。彼らが欲する意志決定者が存在するようでしないことは大きな問題だった。

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 グローバル交渉、商談、ビジネスの遂行に意思決定は大きな影響を及ぼす。民主主義が定着している欧米諸国内でも、議会制民主義の英国と大統領制のフランスでは大きく違う。国民投票でブレグジットが決まってから実際の離脱協定を英議会が承認し離脱するまで3年半を要した理由は議会が何回も否決したからだった。

 これがフランスなら大統領権限が強大なので、迅速に対応できたはずだ。今も年金改革で議会は紛糾しているが、実はフランスの憲法には、社会保障や有事の際の防衛など審議内容によっては、議会で結論が出ない場合でも法案を政府が通過させることができる権限を持っており、マクロン政権はこれまで何度も使った。

 外資が日本企業を買収する例が加速する中、意思決定スタイルは大きな課題となっている。それもコンセンサス型に加え、会議は意思決定の場になっていないことや、会議以外の場での根回しによって空気を醸成するという理解不能の日本独特の慣習の壁が、外資を困惑させている。

 グローバル企業は今、現地のビジネス習慣を最大限尊重するのが普通になっているが、ビジネスにおける意思決定のあり方は、文化の領域を超え、ビジネスに大きな支障をきたす事例も増えている。