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 最近、世界的に名前の知られた大企業が規模縮小や店じまいするケースが増えています。専門家が2年前に指摘したことが当たっているようです。米IT大手GAFAも一斉に人員削減に踏み切り、大都市の目抜き通りやショッピングモールを飾ったブランド企業も店じまいが加速しています。

 コロナ禍をなんとかしのいできた企業もウクライナ紛争でインフレとエネルギー価格高騰、輸送費の高騰などに追い打ちされ、資本力が持たなくなった企業も少なくありません。そのため、企業の統廃合や再編、異業種のM&Aも増加中です。

 コロナ禍で注目された言葉はレジリエンス、危機をチャンスに変えるでしたが、そう甘くはないようです。ただ、相談を受ける企業も含め、遭遇している問題を正面から徹底検証し、時代の変化や他人のせいにせず、多少足踏みしても、再度、ゼロベースから考えて再出発するくらいの覚悟のある企業は多くはありません。

 なぜなら、これまでの成功体験が活かせると思っていたり、そもそも現状維持に満足し、問題意識が低い場合も多いからです。特に古い企業で未だに年功序列や縦の命令系統だけが機能し、下は上に忖度する文化が定着し、さらには命令待ちの無思考状態が蔓延している硬直化した組織は大胆な改革はできない状態です。

 未だに入社すれば、何でもやらす体質が残り、専門性を高めることが重視されていない大企業は少なくありません。ベンチャーなどでどんどんスキルが向上する友人を見ながら焦る大企業サラリーマンも少なくありません。それにある時、突如大規模解雇に直面する可能性もあります。

 リーマンショックや」ギリシャ財政危機から始まったグローバルビジネスの軋みは、コロナ禍、ウクライナ危機で、物事を見通すのが難しくなっています。嵐が過ぎ去るのをじっと待つだけでは生き残れない状況です。

 危機をチャンスに変えるためには、何が間違っていたのか、その本質を見抜いて、根本的に改変する姿勢が必要です。時には大きな組織の中にいると気づけないこともあります。そんな時は外からの批判にも謙虚に耳を傾けることも必要です。

 日本人が常識と思っていることも、全てゼロべースで再考する必要があります。たとえば日本人が大好きな「一体化」も、何を持って一体化するのかの検証は必要です。組織の中でもマイノリティの意見が正しい場合もあります。そこに答えを見出すのであれば、その新方針と一体化する必要があるでしょう。

 日本には文化に根差した合理性も公正さもない慣習が組織に深く入り込んでいます。新しい血を入れることにも気が遠くなるくらい慎重です。私の経験でいうと、フランスのビジネス系の大学では学長が変わればすべてが変わります。組織も人事も仕切り直しです。それができない人はヴィジョンがない人間ということでリーダーにはなれません。

 なぜ、リーダーでもない時から、リーダーになる準備ができているかといえば、それは意識が高く、自分だったらどうするかを考え続けているからです。そのポジションにないのだからといって何も考えるべきではないと思う人はリーダーにはなれません。

 トヨタ自動車が世界1のメーカーになれたのも、リーダー登用で大胆な人事を行っているのも大きな要因です。フランス人を副社長に迎え、社長より高い報酬を支払ったり、今度の新社長には53歳の佐藤恒治執行役員を選びました。

 100年に1度といわれる自動車業界の大改変に直面する中、時代の変化を敏感に感じ取れる感性を持った若いトップは絶対に必要でしょう。無論、実力と実績を備えた人物が必要ですが、昔のように社内外に太い人脈があり、忖度に優れた調整型リーダーは必要ありません。

 社風を根本的に変えるくらいの勇気と決断力を持ったゲームチェンジャーこそ、危機をチャンスに変える原動力になると私は考えています。