shutterstock_283034996

 子育てに最適な国はどこか? という子どもの幸福に関するレポートをユニセフは明らかにしている。少子化に苦しむ日本はランクが低いだろうと考える日本人は少なくないだろう。ところが日本は上位に位置している。理由の一つは私も賛成だが、子供の安全がどの国より保障されているからだ。

 子どもだけで学校に登校している国は少ないし、第1子供だけで大都市の路上を歩き、公園で遊んでいる姿をヨーロッパで見ることは稀だ。過去に子供5人を連れて妻の国フランスに引っ越した直後、子供たちは日本にいる時同様、近くの公園に遊びに行きたいといった。

 「この国では悪い人もいるから子供だけで外出はできないんだよ」というと「どうしてそんな国に引っ越したの?」と聞かれ、答えに窮した経験がある。フランスでは12歳まで保護者同伴の登校は義務だし、子供だけの外出も親が扶養義務を果たさない北アフリカ系移民の家庭以外はありえない話だ。

 理由は誘拐にある。ヨーロッパでは小児性愛者が多く、国際犯罪組織がその市場を持っている。児童ポルノのビデオ撮影から売春まで、想像しただけで戦慄が走るものだが、実際に存在する。身代金目当ての誘拐もある。

 アメリカでは州によって、子供だけの留守番が罪に問われる場合もある。空き巣が入ってきた時に子供が危険にさらされるリスクがあるからだ。中国では子供のいない夫婦に子供を誘拐して提供する業者もいる。

 そもそも子供だけで公道を歩けば危険に満ちている国の方が多い。子どもの安全確保は子育ての基本という意味で、日本に住む外国人はその安全性に驚く。

 無論、日本でも不審者、変質者はいるし、犠牲者も出ているが、その数は他の国より、驚くほど少ない。とはいえ、日本の子どもに対する安全管理は甘すぎると見るべきだろう。子供は家族のみならず、共同体、国家にとってのもっとも大切な財産だからだ。

 ユニセフは、特に子供が育つ環境に注目しており、「子供を取り巻く環境」で 日本は2 位にランクされており、さらに子どもの健康に関する分析では、日本は子どもの死亡率と肥満に着目した身体的健康で第 1 位にランクされ、高い評価を受けている。

 ユニセフがOECDのデータを基に作成した評価によると、日本は健康と安全の最高点に加えて、76 の国と地域の中で 12 位という世界トップクラスの教育システムを備えていることだ。また、働く親にはそれぞれ約 12 か月の有給育児休暇を取得する寛大な権利が与えられ、国は特に父親に育児休暇を取るよう奨励していると指摘している。

 無論、日本より総合点の高い国もある。自然環境、教育レベルの評価の高いエストニア、子供の精神的幸福度が 3 位と高いスペイン、「子どもを取り巻く環境」(空気の質など、自然環境が子どもに直接与える影響)で 1 位のフィンランドは、学校、交通事故、緑地など、子供が関わる環境の要素でも2位だ。

 ユニセフの子供の健康に関する総合リストのトップに立つのはオランダ。子供の精神的健康は第 1 位、スキル は第 3 位で、15 歳の 10 人中 9 人が人生についての満足度が高いと答え、これはユニセフが調査したすべての国の中で最も高く、10 人中 8 人は友達が簡単にできると答えている。

 この調査は、外国からその国に移り住んだ家族を対象に調査が行われており、興味深い結果が見えてくる。無論、子供を取り巻く環境の新たな状況はデジタル環境にあるわけだが、各国は取り組みを始めた段階にしかなく、ランキングするのは難しい。それに外国人差別の視点も重要だろう。