Vinnytsia_after_Russian

 ウクライナ紛争に直面した世界は今年、何が何でも少なくとも停戦、できればロシアのウクライナからの完全撤退とロシアに奪われたクリミアを含む南部や東部の返還で完全終結したいものです。スイスのダボスで開催中の世界経済フォーラムは、西側が軍事支援を強化することで、プーチン露大統領に戦争を断念させようとしています。

 キーワードは「協調外交」です。痩せても枯れても世界1の軍事大国、アメリカの存在は大きく、そのアメリカのバイデン政権が主張するのは国際協調です。それもウクライナ紛争はロシアとアメリカの代理戦争の様相を強めており、ダボス会議でも国際協調の考えは支配的です。

 そもそも国際協調路線は、トランプ前米政権が「アメリカ第1主義」を掲げ、アメリカは同盟国にたいしてさえ摩擦を起こし、孤立したことへの反動で復活した考えです。世界の警察官への使命感を失った50%のアメリカ国民にすれば、同盟国同士の協力は支持できる考えです。

 ここで思い出すのは、1992年から1995年まで続いたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で、国連軍が役に立たず、結局、北大西洋条約機構(NATO)で圧倒的存在感を持つアメリカ軍の大規模空爆によって停戦、和平実現に繋がった流れがあったことです。

 今のバイデン氏の民主党が率いるアメリカは、アメリカだけの一人相撲をする気はなく、より多くの国の参加と協調で停戦をもたらしたいという考えです。といいながらも巨額の軍事支援をアメリカはしており、紛争も終わりが全く見えていません。

 それも戦争そのものに後ろ向きなドイツ連立政権の最大勢力の社民党は戦車の供与も躊躇しており、プーチンを刺激したくない消極的姿勢が露骨です。ウクライナに最も隣接し、中・東欧の大国で欧州連合(EU)最強のドイツが消極的なことに近隣のポーランドやバルト3国が苛立っています。

 フランス、英国が戦車供与を決め、圧力が加えられているドイツのショルツ首相は、最初からウクライナ紛争への対処で単独行動はとらないと宣言しており、その姿勢がウクライナ紛争を長引かせている最大の要因とも見られています。

 冷戦時代からソ連、ロシアとの宥和政策で経済関係を構築してきたドイツは、その東方政策の挫折を未だに受け入れられず、紛争が終結すれば、ロシアから天然ガスを再度買えばいいと主張するドイツ連邦議員はポツポツいるような状況です。

 中・東欧諸国は、ウクライナ紛争の終結に向けての戦いで、ドイツに指導力を発揮して欲しいと考えているのに、ドイツは腰が引けた状態です。そんなドイツを抱えた西側諸国の協調外交でウクライナ紛争を終わらせることができるというの幻想で、ボスニア紛争同様、アメリカの主体的コミットメントが求められています。

 ロシアと中国が安保理常任理事国にいる国連が機能していないことは、誰もが知っています。米共和党は、ウクライナ紛争に莫大な予算を投じながらも出口が見えないことに不満を持っており、ウクライナ紛争にけりをつける別の方法を主張しています。

 ロシアのラブロフ外相はベラルーシ訪問で、侵略しているのは西側のナチズムだと主張し、ウクライナだけでなく、バルト3国、フィンランドのロシア離れを西側の謀略と決めつけています。かつて強引な方法で手に入れ、自分の思い通りに動かしていた子飼いのパートナー国に嫌われたロシアのウクライナ侵攻はストーカー行為というべきでしょう。

 いずれにせよ、国際協調だけでは紛争終結は望めないことは明らかで、プーチン氏の核兵器をちらつかせて対立国を黙らせるヤクザのような手法も国際社会は認めるべきではないでしょう。今求められるのは協調ではなく、強力な指導力だと思います。