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 今、国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27=今月18日まで)がエジプトで開催中だが、争点は毎回同じだ。19世紀から始まった地球温暖化ガスを大量に排出する産業革命で経済発展した先進国が、途上国が要求する実効性のある温暖化対策支援をどこまで約束できるのかが争点だ。

 特に国連生物多様性条約(CBD)第15回締約国会議(COP15)で合意した先進国全体で途上国に毎年、年間1000億ドルの資金援助をする目標について、支援金は820億ドルにとどまっていることが問題視されている。

 近年、気候変動はより具体化し、毎年、各地で夏に発生する山火事は頻度を増し、その範囲は広がり、干ばつに襲われることで農業が深刻な被害を受けている。地球温暖化の危機を体感するレベルが確実に高まる中、COP会議の参加者は毎回、「地球が滅びる」と危機を訴えている。

 しかし、そもそもSDGsに掲げられる目標の主因は人災によるものだ。人類が滅びないためには、そこで一旦、人間の欲望を肯定する資本主義産業発展モデルを諦めるべきという脱成長論まで飛び出している。つまり、人間は原始的なライフスタイルに戻るしか地球崩壊は食い止められないという極論だ。

 仏世論調査会社IFOPが2020年に実施した国際調査で、フランス人の65%、イギリス人の56%、アメリカ人の52%が「今日私たちが知るような文明は今後数年で崩壊するだろう」と答えている。

 ただ、SDGsの背景が形成されている危機感に対して、科学的根拠に欠けるという批判は今もくすぶっているし、崇高な建前を利用する政治的意図も見え隠れする。ESG投資でSDGsに熱心でない企業を狙い撃ちする風潮を疑問視する声も上がっている。

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、SDGsを推進するESG投資モデルは破綻しているとの専門家の意見を掲載した。ESG投資モデルは破綻 元ブラックロック幹部が語る

 さらに、悲観的な地球崩壊論者が危機を煽り立てる中、人類の再生力=レジリエンスは、この危機を十分乗り越える能力を持っていると指摘する楽観論者もいる。

 『世界の崩壊はおそらく起こらないだろう』の著者で知られるフランスの未来学者、アントワーヌ・ブエノ氏は、崩壊が起こらない理由を具体的に挙げている。同氏はフランス上院顧問でSDGs委員会の作業部会で働き、崩壊論者でも楽観論者でもない「希望を持ち続ける」論者と言われている。

 仏週刊誌レクスプレスはブエノ氏の主張を「気候、出生率・・崩壊が(おそらく)起こらない10の理由」というタイトルで伝えている。多くのリベラルな環境保護活動家が成長モデルを否定し、反権力、反大企業、自然回帰の論を展開する中、ブエノ氏は、環境危機回避の永続的解決策に「脱成長は必要ない」としている。

 ブエノ氏は、特に気候変動の緊急事態に直面した場合、厳しい道が待ち受けていることも認めている一方、歴史上、文明が滅亡した歴史はインカ帝国を含め、ほんの数回しかなく、2008年のリーマンショックは1929年の世界大恐慌を上回る規模だったが、グローバル化したシステムが機能し、世界経済は強力な回復力(レジリエンス)を示したとしている。

 化石燃料や金属資源の不足は代替エネルギーや技術の進歩で補うことができ、宇宙資源の採掘も遠い将来ではないと指摘している。興味深いのはSDGが最もで問題視する人口爆発で地球上の全ての人間にいきわたるだけの食糧がなくなるという危機意識だ。

 ブエノ氏は途上国で増え続ける人口は十分な避妊知識がないことによるもので、その浸透と対策を強化すれば、産児制限は可能で人口の爆発的増加は食い止められるとしている。2080年前に人口増加を単純に30%抑えるだけで人為的な温室効果ガス排出量を約10%削減できるという研究もあることをブエノ氏は指摘している。

 一方、食糧不足の根拠となっている地球温暖化で赤道に近い地域の農業に壊滅的被害を与えている問題では、年間を通じて寒冷で広大な凍土が広がるロシアなどで、温暖化で農業が可能になる可能性があり、農作物の生産を増やすかもしれないとしている。

 無論、もともと大農業国のフランスには自然回帰を訴える脱成長論者も少なくない。実際、新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが浸透し、田舎暮らしは他のEU諸国以上に急増した。空の移動の国内便の大幅削減も大半の国民は支持している。

 大都市への人口集中も温暖化や大気汚染を助長してきたことからすると、人々のライフスタイルが変わり、地産地消が進めば、温暖化ガス削減に繋がる。

 ブエノ氏は、SDGsは1国や地域で解決する考えは間違っており、グローバル化によってレジリエンスは高まっているので崩壊を食い止められるという意見だ。これは反グローバリゼーションの環境保護派とは完全に真逆の意見で、成長論を肯定する興味深い意見と言える。