G7_summit_at_Shimakan

 もし主要7か国(G7)首脳会議主催国が日本の場合、用事があるのでホスト国の首相が欠席する選択肢を考えるのは難しい。ましてやG7の中で第2次世界大戦の敗戦国という立場を考えれば、たとえG7が機能不全に陥っているとしてもホストとして最優先に取り組むべきと考えるはず。

 今回、ドイツのショルツ首相は自国開催のG7を欠席し、北京で3期目に入った習近平主席に会った。無論、大義名分はある。その一つは、大国となった中国が極端にロシア寄りにならないよう欧州連合(EU)で最も中国に経済依存するドイツが中国を孤立化させないことだった。

 アメリカのバイデン大統領は就任以来、対中強硬路線を継続しており、追い詰められた中国が対ロ関係を強化すれば、過去の東西冷戦の再来か、それ以上の世界分断が起きる可能性もある。ショルツ氏は習近平にロシアを落ち着かせられるのは中国しかないことを強調した。

 だからといって自国でG7開催時期に訪中するのは如何なものか。ドイツの説明は、G7メンバー国には事前に通達し、合意を得ていたとしているが、ならば主目的が対中経済関係強化にあったというのは、どうなのか。

 個人的には日本人として、近年のドイツの行動を注視している。理由はドイツは同じ敗戦国で戦勝国の連合国側に戦後の冷戦期に封じ込められた経験を持ち、その中で日本と共にアメリカに次ぐ経済大国として成長した国だからだ。

 ドイツはEUで不動の経済大国として多額のEU分担金を支払い、失業率もEU加盟国で最低で、ユーロ導入後、マルク時代よりもユーロ安が続くことでドイツの基幹産業である自動車などの製造業は輸出が好調となり、対中貿易も上昇を続けた。

 特にシュレーダー政権の2003年に打ち出した経済構造改革「アジェンダ2010」で、社会党政権ながら、古い社会主義を抜け出したことで、ドイツは急成長した。無論、その後のメルケル政権でも中露と濃厚な経済関係を築いたことが経済強化に繋がったことは否定できない。

 2015年にイランの核合意にこぎ着けた時に、イランとの交渉にあたった6か国の中、唯一国連安保理常任理事国でなかったのはドイツで、その前、イラク攻撃に抵抗したのもドイツだった。アメリカのメディアはドイツの態度に「もはやドイツは戦後を脱し、発言権を強化した」と指摘した。

 一方、日本は許しを知らない中韓からの批判を今も恐れ、戦後を脱していない。故安倍首相がアジア太平洋地域の安定のための積極外交を展開し、日本の脱戦後に貢献したが、道半ばで倒れてしまった。事件後、日本は屈辱的戦後を抜け出せないまま、国連安保理常任国入りも遠のいた感がある。

 ドイツはG7の代表気取りでホスト国にも関わらず、サミットをすっぽかして習近平に会いに行った。ドイツはそこまでG7に信頼されているのか、それともドイツ独特の超内向きの自国最優先の態度なのか、少なくともG7が過去にないほど機能不全状態にあることが露呈したのは事実だ。

 G7の中で中国と最も太い経済関係を持つのは日本で、G7として中国のロシアへの接近を食い止めたければ、日本の首相が習近平に会う方が効果的ではないのか。無論、日中関係は独中関係よりははるかに複雑で地政学的緊張状態もあるが、経済成長減速中の中国にとってのインパクトはドイツ以上に大きい。

 トランプ政権登場以来、G7は機能不全どころか存在意義も危うい状態で、ウクライナ戦争でも無力感が露呈している。確かにアメリカ1国だけではデカップリングに陥るリスクもあるが、西側が投資したことで中露は経済が安定し、その経済力で西側を脅威に晒しているのも現実だ。

 それはまるで日本人がパチンコに興じた金が北朝鮮に送金され、核開発が進み、ミサイルで日本を脅迫しているのと似ている。冷戦期に経済に集中してきた日本とドイツは、イデオロギー戦争に直接関与せず、「経済と政治は別物」という考えが信仰レベルで信じられているようにしか見えない。

 だから、ウクライナ戦争が落ち着けば、また、ロシアから天然ガスを買えばいいという発言が1部ドイツの政治家から飛び出している。

 ドイツにとってのこだわったイデオロギーは緑の党に代表される過激な左派だが、彼らも対ウクライナ支援の急先鋒で武器提供にも積極的だ。原発ゼロ政策も取り下げており、ドイツがこだわる信念は経済だけなのかといいたくなる。

 今、世界の危機を話し合い、効果的な対策を打ち出せる機能は確実に弱体化しているように見える。安倍元首相を失ったことは世界の不安定化に繋がっていると見るべきだろう。