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 欧米各国は第2次世界大戦以降、今、最も日本に注目しています。理由はアジア太平洋地域の覇権を画策する中国と世界に存在感を示したいロシアの脅威に対して日本のポジションはあまりにも重要だからです。その根拠は地政学的理由とともに日本が中露に対して独特なスタンスを持っているからです。

 独特なスタンスとは、欧米列強のスタンスは対露制裁姿勢に表れているように、自由と民主主義、法による支配、人権を普遍的価値観として中露に全面的に適応し、対立を深めています。一方、日本は守るべき理念だけで行動することなく、いいか悪いかは別として、曖昧な姿勢で独特のチャンネルを築いたからです。

 1党独裁の中国共産党を率いる習近平国家主席が危険な独裁者であっても、アジアの大国同士としての関係性を重視し、一方で姿勢を明確にしながらも関係を重視してきました。ロシアに対しては北方領土問題という主権にかかわる重要案件を抱えながら、プーチン氏を独裁者と知りつつ、関係を築き、平和条約の締結まで口にしてきました。

 そしてインド太平洋地域の安全保障を巡り、アメリカ、オーストラリア、インド、英国などを巻き込み、自由で開かれた同地域の安全保障に日本は主導的役割を果たしたのは、故安倍元首相の最大の功績だったといえます。今や同地域に関わることは英国だけでなく、フランス、ドイツにとっても重要です。

 まるで欧州大国は時代に乗り遅れるなとばかりにインド太平洋地域に積極的に関わり、米中対立が深まる新たな世界情勢で存在感を示そうとしています。これはかつて米欧が主導した大西洋文明が太平洋に移ったことの証です。当然ながら安倍外交で同地域の安全保障に力を入れてきた日本は今、カギを握る存在です。

 そこで重要になるのが、ウクライナ危機で表面化した対ロシア制裁に加わらない新興国、途上国の存在です。今、アフリカにおいても東南アジアのASEAN諸国においても欧米離れによる中露接近は目を見張るものがあります。

 最近、アフリカ出身で日本の大企業の中間管理職にある人物から「SDGsを推進しても第三世界は取り残され、先進国との格差は解消しないのでは」という疑問の声を聴きました。私の答えは「SDGsは誰も取り残さないという精神だから、格差解消はゴールの1つ」と答えました。

 しかし、現実はSDGsのブームを利用して金儲けに走る先進国の企業の動きは否定できず、途上国は食い物にされるだけとの不信感が根強いのが現状です。私個人は日本は欧米との連携は重要ですが、ASEAN諸国への投資を増やし、安全保障に協力することは極めて重要と考えています。

 特に中国がASEANで展開する債務の罠に関しては、2つの関わりが重要だと思います。1つは直接の経済支援や経済発展のための投資であり、もう一つは経済政策や安全保障分野のコンサルです。不当金利で債務を膨らませる中国式財政支援の不合理性を分かりやすく説明し、政策提言することです。

 今は経済は経済のプロの知識活用が重視される時代です。国家もコンサルのアドバイスを必要としています。知財の活用は必要不可欠です。中露包囲網を構築するには欧米に不信感を抱き、中国になびくASEAN諸国との関係強化は必須です。

 せっかく先見の明あって安倍元首相が展開したインド太平洋地域の安全保障構想を、継続的に発展させる必要があるでしょう。重箱の隅をつつくような批判で自国のことしか考えられない左派勢力を振り回されているのは残念でなりません。

 せっかく欧米列挙が日本との連携強化に動く中、コロナ禍後、ウクライナ危機後の世界の枠組み作りに日本は本気で存在感を示してほしいものです。