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 フランスのマクロン大統領が2050年までに原子炉6基を増設すると発表したのは今年5月10日だった。世界でアメリカに次ぐ原子炉56基を保有するフランスが、原発廃止の潮流に逆行する決断を下した理由について、エネルギー関連の専門ジャーナリスト組織LMEの記事で「核ルネッサンス」についての記事を掲載した。

 同ウェブサイトによれば、1999年に実施した世論調査では、原子力発電所の建設を継続する必要性に同意したフランス人はわずか11%、反対は64%だった。ところが最近のLMEの調査によれば、賛成44%、反対29%に逆転した。

 一方、同調査では反原発運動の環境団体の信頼性が64%から35%に低下し、原子力安全局(ASN)の信頼性が42%から64%に上昇した。それを物語ったのが今年4月に実施された大統領選挙だった。候補者の過半数が原発増設を支持し、選挙結果はその後の世論調査とも一致している。

 今年末までに原発からの完全撤退を決めていた反原発の急先鋒だったドイツでも、68%の国民が原子力発電所の拡張に賛成している。ドイツ政府は年末に廃炉予定の原子炉を来年4月まで緊急電源として維持することを表明したばかりだ。

 LMEが指摘する世論の変化の理由の一つは、代替えエネルギーが地球温暖化対策で効果を上げていないと感じる人が増える一方、代替えエネルギーのコストが高止まりし、ウクライナ危機が追い打ちをかけることで、エネルギー価格が高騰していることを挙げている。

 代替えエネルギーへの転換は世界的に取り組んできたことだが、欧州は今夏、熱波に襲われ、気候変動が加速しているようにしか見えず、代替えエネルギー効果を疑問視する声は増えるばかり。

 さらに、「原発の廃止を議論してきた欧州で、専門家の原発の安全性についての科学的指摘が支持されるようになったことも影響している」と同紙は指摘した。フランスでは今、原発拡張に向けた「核のルネッサンス」が広く受け入れられている。

 加えて欧州連合(EU)も2025年の脱炭素に向けた投資促進のためのグリーン分類法のタクソノミーに原発を組み込んだことで、昨今、ブームになっている投資の新しい流れのESG(環境・社会・ガバナンス)投資が進み、原発拡張に資金が集めやすくなっている背景もある。

 しかし、そもそも福島第1原発事故後に発足したフランスのオランド左派政権が原発削減をめざした2012年から17年の5年間を除き、フランスは基本的に原発の依存度を高める方向にあった。理由の1つは価格の安いエネルギーの安定供給と軍事的な意味での安全保障で、フランスが常に重視する国家の独立性があるからだ。

 フランスは食料自給率も100%を超え、エネルギー自給率でも他国に頼らない安全保障への意識が高く、国営系の電力会社フランス電力(政府は秋以降、再度国営化する)の脱炭素への取り組みを重視している。原発拡張の「核のルネッサンス」をフランス国民は時代の流れと見ているように見える。