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 この夏、ヨーロッパを襲った熱波は過去最大級の猛暑が長期間続いたことで、山火事、干ばつ、熱中症による健康被害、さらには突然襲う雷雨で、地球温暖化による異常気象への危機感が一気に高まりました。そのため、あらゆる分野で温室効果ガス削減への取り組みが加速しています。

 フランスでは今、プライベートジェットが1時間の飛行で排出する二酸化炭素量が、乗用車1台が1年間走行した場合の平均排出量に相当するということで、プライベートジェット廃止論まで飛び出しています。そんな中、世界的に観光が温室効果ガス排出量の8%を占めていることが問題視されています。

 観光といえば、離れた場所への移動が多くなる傾向があります。ヨーロッパでは太陽を求めて北ヨーロッパに住む人々は夏、一斉に南仏やスペイン、イタリア、ギリシャなど地中海沿岸に移動します。フランス人の多くも南仏をめざし、パリからの距離は900キロはあります。

 2021年6月にフランスでは、気候変動とレジリエンス対策として列車で2.5時間以内で行ける距離の国内航空路線が廃止する法案が可決しました。そのためパリ・リヨン間、パリ・ボルドー間などの飛行機での移動はできなくなりました。

 さらに世界で最も外国人観光客を集めてきた観光大国フランスは、人の移動が不可欠な観光で持続可能なSDGsビジネスモデルへの模索が始まっています。特に、炭素集約度の低い輸送手段を使用して、環境をより尊重する場所で、より多くのローカルツーリズムを促進する方法を模索しています。

  30 代の 3 人の仲間が、2020 年に立ち上げた GreenGo もその1つで、特定の社会的および環境的目的を持って、より持続可能な観光を構築するのが目的で、環境への配慮に基づいて厳選された宿泊施設を予約するサイト。環境への配慮を最大限考慮した宿泊施設提供が、彼らのコンセプトです。

 GreenGoの創業者の1人、ギヨーム・ジュフル氏は「フランスは世界有数の観光国だが、経済の流れのほとんどが、特にアメリカの企業を経由していることに気づいた。これは少し残念なことだ」といい、フランスの観光会社は、より公平な手数料モデルを提供すべきと主張している。

 たとえば世界各地のバケーションレンタルやログハウス、ビーチハウスなどユニークな宿泊先や体験を提供するAirbnb がブッキング手数料 18% を求めているのに対して、GreenGoは10%にしたとしている。現在、登録されている厳選された ロッジ、ベッド・アンド ・ブレックファースト、ホテル、ユニークな宿泊施設は約2,500軒。

 さらに長距離移動を勧めないために、今後数年間で近隣諸国へ観光商品を拡大するつもりはないとし、フランスのみを対象としている。掲載する宿泊施設の情報は主に口コミだそうで、毎月約 200 件の登録依頼を受けている。基本は海の景色や緑豊かな自然が満喫でき、電車でアクセスできることが基本。

 さらに現地で提供される有機食材による朝食など、食材(地産地消)、節水、節電のための断熱材、水の質、廃棄物、生物多様性(鳥が生息できる環境が整っているか)など110項目の項目を審査し、宿泊施設を厳選しているとしています。さらに宿泊施設は電車の駅から 10 km 以内と定めているそうです。

 ギヨーム・ジュフル氏は、観光は提供する側と利用する側が、SDGsの価値観を共有し協力するパートナーであり、環境に敏感な顧客を歓迎するとし、「われわれの手数料ポリシーを考えると、お金に見合った価値を提供することを約束している」とアピールしている。

 利用者の多くはSDGsに共感する若い世代が多く、すでに観光化され、観光収入目当てだけの宿泊施設を好まない人々が多い。裏を返せば、そういう意識を持った顧客を増やすためには、観光施設も努力が求められるという流れだ。

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