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 ロシア軍が占領し、安全性が懸念されているウクライナの世界最大規模のザポリージャ原発について、同国のゼレンスキー大統領は16日、守るための決意が不十分なら「世界は敗北する」と訴えました。さらに、ロシアが国際社会の要求を無視するなら即時の行動が必要だと訴えました。

 同日、ゼレンスキー氏はフランスのマクロン大統領と電話会談し、ザポリージャ原子力発電所のロシア支配を「核テロ」として議論したことを明かにしました。詳細は明らかにされていませんが、フランスは世界最大規模の56の原子炉を保有し、その安全管理でも定評があり、フランスに情報提供することで、協力要請した可能性があります。

 フランス大統領府によると、マクロン大統領はウクライナの原発施設の状況を調査するため、現地に査察団を派遣するという国際原子力機関(IAEA)の提案を支持すると伝えたとしています。

 フランスは現在、仏全土18か所の原子力発電施設に56基の原子炉を保有し、現在、57基目をマンシュ県のフラマンビルに新しいタイプの欧州加圧水型原子炉(ERP)を建設中です。マクロン大統領は昨年暮れ、脱炭素へのエネルギー転換にさらに8基を増設する方針を打ち出しています。

 フランスは1986年のチェルノブイリ原発事故を受け、安全性向上のために原子力安全局(ASN)という独立行政法人を設立し、さらに9・11米同時多発テロを受け、国防相のもとで原子力防衛安全機関(ASND)を設立し、特に領土内外でのテロ対策、軍事攻撃に備えています。

 ASNは政府からも事業者からも独立しており、放射能漏れなど施設内の事故や不具合を監視し、対策を主導する立場にあり、周辺住民など国民への情報公開も行っています。一方、ASNDは、特に原発施設の防空を重点的に行っており、徹底した監視体制、テロ危険度が高まった場合の迎撃ミサイルシステムなどの使用を管理しています。

 欧州最大の56基の原子炉を持ち、世界で4番目の核兵器保有国のフランスの核への防衛意識は極めて高く、世界で10番目の15基の原子炉を持つ戦争中のウクライナにとっても極めて力強い存在です。

 逆にフランスにとっては、戦争中に敵国に自国の原発施設を占拠された経験がないフランスにとっては、ウクライナの経験は極めて有用な情報です。今後、ウクライナに対して原発施設の防衛支援をフランスが行う可能性もあります。

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