Abe f and s
  派閥政治を終わらせられなかった安部父子

 岸田政権の組閣は、適材適所というよりは相変わらず派閥配慮の人材配置というべきものでした。中国の台湾有事の脅威、コロナ禍、ウクライナ戦争、エネルギ―危機によるインフレの長期化懸念、異常気象と、日本も他の国同様、危機に見舞われ、政治、経済、国防、外交、エネルギー、環境問題は深刻です。

 表向きは、その危機的状況を乗り切るための万全の体制を整えるために参議院選後、政府は新しい体制で出発する必要があったというわけですが、今後、3年間選挙がない可能性もある中、自民党がわが世の春を満喫できるとは到底思えない状況です。

 思い出すのは、1980年代半ば、暗殺された安倍元首相の父、安倍晋太郎外務大臣(当時)を取材した時のことです。その年は外務大臣として最後になる年で、その後、次期首相と期待されながら、1991年に67歳の若さで他界しました。

 当時、著名な政治評論家に同行して外務大臣室で会った安倍氏が語ったことで、印象に残った言葉があります。それは「わが国の政治は自民党内の党利党略、権力闘争にあまりにも明け暮れてきた。私はそれを終わらせたい」というものでした。

 その言葉に安倍氏の純粋さと、日本がバブル絶頂期に1流の民主主義国家になる鍵があったと今、痛感しています。それから35年以上経ち、自民党政治は何も変わっていない姿を見て落胆するしかありません。いや、むしろ国家を率い、国際社会に存在感を示した息子の故安倍晋三元首相の死後、自民党内に安倍氏に代わる人材がいないことに背筋が寒くなります。

 ネット上でまことしやかに流されている安部氏暗殺の背後には、安倍氏の存在で日本が再生することを嫌悪する中韓の誰かが指令を出し、安倍氏を暗殺したという陰謀説もなんとなく説得力を持ちます。結果的に彼らが最も嫌う改憲右派の自民党と反共の旧統一教会を抹殺しようという流れができているからです。

 小さな人間は、長いものに巻かれろ、寄らば大樹の陰ということで、人の顔色を伺い、風を読んで、何とか生き延びようとしますが、国家の指導者がそれでは話になりません。

 日本に対して村社会とか、島国の精神、年功序列という指摘は、けっしてポジティブな見立てではありません。同じ島国の英国では故サッチャー氏が首相に任命されたのは53歳の時、ブレア氏は43歳、ブラウン氏は56歳、キャメロン氏は43歳、ジョンソン現首相も55歳と就任時若く、年功序列など存在しません。

 サッチャー氏以来、メイ氏と女性首相も2人、閣僚の女性比率も35%を超えています。日本の閣僚の平均年令は世界一高齢で、年功序列を脱していません。儒教の影響もありますが、リーダーシップから今はリーダーは役割であって、権威や地位ではない時代に未だに権威主義にこだわっているというしかありません。

 この後進国並みの古い体質に魅力を感じる若者は、ほぼいないでしょう。つまり、若者が政治に期待しない傾向を自民党こそが強めているといえます。

 そこにさらに権力闘争、派閥政治が加われば、政治に悪臭が漂うだけです。安倍氏の父親の悲願は果たされないままというのは悲しさを通り越して怒りも感じます。自分が大臣や首相になりたいという地位や名声ではなく、国家国民のために自分は何ができるかを先に考える政治家はいないのでしょうか。

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