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 中国は自然科学系の学術論文で注目度が最も高い上位1%の論文数で、米国を抜き世界1位になったことが9日、日本の文部科学省科学技術・学術政策研究所が公表した報告書「科学技術指標」で明らかになりました。

 中国は知的分野で「とうとうアメリカを抜く世界で最も偉大な国になった」と歓喜に酔いしれていることでしょう。中国が喜ぶ背景には、何でも欧米、日本から盗んだ技術で国を大きく見せているという屈辱的な状況を脱することを切望していたからです。

 「今や世界が中国に学ぶ時代が到来した」というわけです。中国は昨年、全論文数や上位10%の論文数でも1位になっており、世界の研究をリードするという意味での存在感が増しています。

 これで今まで手にすることのなかった中国人のノーベル賞受賞者が相次げば、大国としての中身も整えることになるということで、世界トップに王手をかけたと思っているかもしれません。

 英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が昨年9月に発表した「世界大学ランキング」最新版でも、英語圏の優位な高等教育界でトップ10はいつものように英米の大学が占めた一方、中国の大学も初めて2校がトップ20に入りました。日本の最高位は35位の東大で大きな変化はありません。

 つまり、世界の頭脳で中国の躍進は否定しがたい段階にあるというわけです。背景には国力増強による世界1の国家実現を最大目標として掲げる中国政府が世界の工場となって手にした膨大な資金を、高度な人材育成に費やした結果だともいえそうです。

 対するアメリカやヨーロッパの高等教育への予算、学ぼうとする若者への支援、何より個人の野心と国家目標を一致化させることがなくなっている自由と民主主義の大国は、高度人材を生めなくなっています。ましてや日本は個人の野心も国や組織へのエンゲージメントも希薄で、先進国の後塵をなめている状態です。

 私が長年教鞭をとったフランスの大学での20年前から急増した中国留学生は、欧米人学生が学内の卓球台やビリヤード台に群がり、パーティーに明け暮れているのに対して、休み時間も惜しんで勉強し、図書館でパソコンに向かっている姿をよく見かけました。

 彼らのモティベーションの高さの背景には将来彼らを受け止めてくれる急成長を遂げる中国企業が華僑ネットワークを含め、大気しているからです。無論、景気後退と低成長時代に突入したとも見られる中国の動向は日々変化はしていますが、優秀な人材が増えれば増えるほど、国家は滅びないともいえます。

 それにウクライナに侵攻したロシアを西側諸国は抑え込めず、世界には北朝鮮初め、独裁専制国家が自由主義国家数を上回っているのが現状です。

 中国は「21世紀型社会主義が西側に勝つのは秒読みだ」というでしょう。経済力、軍事力であと一歩でアメリカに迫ると国民にアピールする中国共産党は、ペロシ米下院議長が台湾を訪問した際、怒り心頭の中国の王毅国務委員兼外交部長(外相)が「偉大な国(中国)を辱めたら許されないことをアメリカは思い知るだろう」と強弁しました。

 今も続く台湾周辺海域での中国人民軍による実弾軍事演習は、王毅外相の発言を裏付けるものですが、結果的に東アジアで日本、韓国、台湾が結束し防衛強化に動く流れを作り出しています。

 個人的には無論、中国の脅威に対してあらゆる面で万全の備えをする必要はありますが、同時に中国の脅威を過度に恐れたり、弱気になる必要もまったくないと私は考えています。

 今はむしろ、日本を弱体化させた原因を分析し、再生のシナリオを作ることが急務と思われます。たとえば、日本の明治維新以降の発展を支えた教育レベルの高さ、戦後失われた誠実さと強い愛国心を基本とした日本の精神文化、政治と民主主義を支えるジャーナリズムの貧弱さの改善が急がれていると思われます。

 フランスはエリート教育、リーダー教育に熱心な国として知られていますが、私が知る限り、フランス人エリートの大半は頭脳明晰だけでなく、愛国者です。

 独裁主義、専制主義、権威主義は間違いであり、長い歴史を見る限り、長続きはしません。頭脳だけでは人間は幸福に慣れず、満足もしません。実力だけで大国を維持した国もありません。人間の本姓に合わない主義は人を不幸にするだけであり、彼らは常に先行しますが、最終的勝者になった歴史はありません。

 むしろ、文明を滅ば差ないために自由と民主主義、法の支配を信じる陣営は、徹底的に腐敗に対処し、身勝手で自己中心的な間違った動機で生きる人を許さず、教育を見直し、より透明性を高め、自由と人権の保障を厳しくチェックすれば、中国恐れるに足らずと思います。

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