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 今や待ったなしのカーボンニュートラル(脱炭素)の取り組みの中で、ヨーロッパ文明を読み解くのに欠かせない河川輸送の復活が注目されています。フランスの航行可能な水路網の約 80% を管理する行政機関、仏水路局(Voies navigables de France=VNF)の動きは、どこかでワクワクする話です。

 ヨーロッパの文明はローマの時代から川を利用した人と物の移動によって発達し、そのため川沿いに都市が築かれました。実はパリも立派な港町で、大西洋沿いのルアーブル港から入るセーヌ川はパリを通り内陸と繋がっています。

 その河川ネットワークは今も健在で、地中海と大西洋はフランス国内を流れる河川で全て繋がっています。高低差を解消する高度な運河の技術は16世紀には確立していました。

 フランスのほとんどの水路ネットワークを管理するVNFによれば、フランスの河川ネットワークは、ほとんどの大都市圏と農村部を横断し、血管のように張り巡らされています。VNFは今、カーボンニュートラルのロジスティクスとして持続可能な代替手段を再構成する重要な遺産と説明しています。

 国土に占める平野面積が日本に比べ10倍といわれるフランスの河川は大型船が航行できる幅の広い流れの緩やかな川から、小型船しか航行できない幅の狭い川まで様々ですが、船の航行が可能な河川が多く、16世紀から本腰を入れて運河が整備されています。

 今では個人所有の小型ボートからペニッシュと呼ばれる住宅用の船での利用が多く、フランスの田舎の美しい自然、小さな村、大都市を観光しながら航行する人は多く、リタイヤ組の中には自宅を売って移動しながら船上生活を楽しむ人も少なくありません。

 その河川や運河をカーボンニュートラルのために再利用する動きが出ています。実際、仏世論調査会社IFOPの調査によると、フランス人の約90%が特に密集した都市部で道路や鉄道網の混雑を緩和するために、河川交通手段の開発は重要かつ不可欠と考えていると答えています。

 もともとロジスティックスとして発達した河川や運河には閘門、ダム、堤防など航海のために設計されたものが整備され、温暖化ガスを排出しない発電手段としても注目が集まっています。あとは川を航行する船の太陽光発電や風力発電などによるEV化は、特に物流のための大型貨物船では重要です。

 VNFによれば、2021 年に河川輸送された物資は 5,250 万トン、河川輸送は昨年と比較して 4% の増加し、何よりも 2,625,000 台分以上のトラック輸送が回避されたことだとしています。河川輸送は輸送トンあたりトラックの 5 分の 1 の CO2 を排出し、大都市間の輸送を実現しているといいます。

 河川輸送は、国の温室効果ガス排出量の 30% を占める輸送部門のカーボンニュートラルに貢献する貴重な代替え輸送手段で、それもインフラはすでにかなり整備されています。しかし、VNFによれば代替え輸送手段として河川が注目されたのは最近の話だそうです。

 海と河川輸送を拡充すれば輸送手段の多様化で道路、鉄道輸送ネットワークの混雑を緩和する解決策となるでしょう。スマートシティ化が進む都市間のネットワークという意味でも、持続可能なロジスティクスに貢献するものです。内陸港を持つ都市間の競争促進にもつながる可能性があります。

 すでにサプライチェーンの構築に河川利用を導入する企業も現れており、政府の目標は2030 年までに、河川で輸送される貨物の量が全体輸送の50%を占める規模にしたいとしています。

 さらに最大 30 億ユーロの経済的利益を生み出す可能性のある貨物、観光、娯楽など、それぞれの地域に適した河川ソリューションを構築することを目標にしています。政府の調査結果によれば、気候変動の加速に伴い、河川の水路管理は水という希少資源を管理するための強力なベクトルと強調しています。

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