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  ヴェルサイユ宮殿の噴水も給水停止

 フランスのボルヌ首相は、フランスが数週間にわたって経験している熱波と雨が降らないことで発生した干ばつについて8月5日、「この干ばつは、わが国でこれまでに経験したことない最も深刻なもの」、「この状況は今後15日間続くか、さらに深刻化する可能性さえある」との声明を出しました。

 そのため「最も影響を受ける地域の県庁からの定期的なフィードバックを確実に受け、関連する組織が横断的に水対策対応に当たる」との声明を出しました。政府は62の県で水の制限に関して「危機に瀕している」とし、最高の警戒レベルにあるとしています。

 そもそもフランスはアルプス、アルザス、ピレネー以外の山岳地帯はなく、水の確保は容易ではありません。私自身、30年前にフランスに引っ越して最初に驚いたことは、フランス人の水の使用に対する厳しい姿勢でした。皿洗い、洗面、シャワー、庭の水やりで勢いよく水を使うことは厳しく戒められていました。

 日本には「悪いことは水に流す」という言葉がありますが、国土が山に覆われ、大量の河川が流れる日本ならではの表現です。フランスでは水は貴重なので、菜園が趣味だったフランス人妻の亡くなった父親の家には地下に雨水を溜める巨大タンクが設置され、菜園に使用されていました。

 その義父が住んでいた西部ブルターニュ地方も干ばつの恐れはないと考えられていたにも関わらず、日系企業数社が誘致されている同地方のイレ=ヴィ=レーヌ県でも、県の3分の2が熱波による干ばつの危険性が高まっており、節水警報が出される事態になっています。

 山のないブルターニュ地方の多くは地下水の水源はなく、河川やダムから飲料水を調達しています。最近、貯水池の水位が下がったことから、秋の水不足が懸念され、地元当局は今年12月初めには飲料水は50%減少する可能性があると警告しています。

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  フランスで現在売られている雨水タンク

 一方、首都パリと周辺のイル=ド=フランスも今月に入り、水不足警戒の4段階の第1レベル(強制力はない節水措置)区域に指定され、節水が呼びかけられています。

 そのため、パリとパリ市周辺では庭の日中の水撒きを控えること(可能ならば雨水を溜めるタンク設置)、水道やシャワーの蛇口に節水フィルターを付けることが奨励されています。平均150リットルの水を消費する風呂より、平均50リットルの水を必要とするシャワーの使用を奨励しています。

 フランスでは一度お湯を溜めたバスタブに何人も入る習慣はないので(体をバスタブ内で洗うため)、結果的に風呂はシャワーより水を消費します。さらにジョギングの後を含め、1日数回シャワーを浴びることは控えるよう呼びかけています。

 細かい指示としては体や頭を洗剤で洗う際は、シャワーを出しっぱなしにしない、洗面や歯磨きする時も水を出しっぱなしにしないなどの注意も呼びかけられています。

 パリ市当局は公園や緑地への水撒きは水の蒸発の激しい日中を避け、夜間のみとし、水漏れの点検も徹底して行い、観光や美観維持に欠かせない噴水、公道清掃時の水撒きも停止させています。当局は飲料水などの供給が滞ることは現時点ではないといっていますが、安心できるレベルではないとしています。

 ただ、節水制限を守らない場合の罰金は1部地方と違い、パリには科されていません。パリ市によればパリ市民1人あたりの1日の水道水消費量は145リットルで1990年代から、さまざまな努力で着実に減っているそうです。

 今後、企業に対しても水消費と排水に関する厳しい措置も検討されており、セーヌ川沿いの建物には川の水を利用した冷却システムからの冷風が提供されていますが、水の消費量削減、下水管理などを徹底して行うとしています。

 欧州森林火災情報システム(EFFIS)の今月5日の発表によると、2006年以降、比較可能な統計を保持しているEFFISによると、フランスは今年7月末までに過去最高の47,361ヘクタールが森林火災で焼失。この記録は、火災のピークシーズンがまだ終わっていない段階で達成されました。

 欧州のコペルニクス計画の衛星画像に基づくデータベースによると、2006年から2021年までの森林火災による焼失面積は年平均9,814ヘクタールでした。ただ、1970年から1980年のフランス全土の年平均焼失面積は約45,000ヘクタールで、予防対策、パトロール、初期火災への迅速な介入などの努力によって、その後大幅に削減されたとしています。

 ところは地球温暖化による熱波の発生、森林伐採が生み出す木質バイオマスの急増などで山火事は急増し、干ばつによる生活用水の不足だけでなく、農業、牧畜業への被害も甚大です。仏気象庁は熱波だけでなく、南を中心に今後、雷雨発生リスクが高まると警告しています。

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