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 新型コロナウイルス感染症に関する世界保健機関(WHO)の今月24日付集計で、日本の週間感染者数が前週比73%増の96万9068人で世界最多となり、その記録は今も毎日更新されています。世界の新規感染者数660万人中、15%を日本が占めており、特にオミクロン株のBA-5拡大は目を見張る状況です。

 つい前月まで、日本は世界で最も新型コロナウイルスの感染者が低いとされ、専門家の間だけでなく、一般的にも「日本人は決まりを真面目に守り、強制でもないのに例外なくマスクを着用している」ことが指摘されていました。しかし、残念ながらその伝説はもろくも崩れているようです。

 これだけコロナ禍が長期化すると、日本の感染率の低さは何らかの理由があるはずと世界が注目していました。米メディアは日本人の肥満率の低さが関係していると指摘しました。肥満は免疫機能の障害と関係があり、コロナ感染による入院リスクが3倍になる恐れがあると米疾病対策センター(CDC)は指摘しています。

 2016年の経済協力開発機構(OECD)のデータによると、人口全体に占める肥満の人の割合は日本が4.2%とOECD加盟国中で最も低い一方、アメリカの肥満率は40%に上ります。

 世界一の高齢化社会の影響を指摘する声もあります。ウイルスをまき散らすのは社会的活動が活発な10代から50代、重症化するのは高齢者という構図からすれば、動きの鈍い高齢者率が高ければ、感染拡大率は低くなるという理屈です。

 無論、加えて罰金を科すことなく、マスク着用が徹底してできていることや、欧米のように音楽コンサートで密状態で踊りまくるとか、密状態の飲酒が繰り返されることも日本は少なく、清潔好きの日本人は、もともと手を洗う習慣もあります。フランス人の7割がトイレの後に手を洗わないという統計もあります。

 もう一つは水際対策が容易なことです。多くの国が地続きで他国と国境を接しており、人の行き来を制限するのは容易ではありません。しかし、同じ島国の英国は日本よりはるかに感染者が多い状況が続いてきました。

 今回、感染力の強いBA-5の場合は話は違うようです。日本は世界一感染者が少ない伝説はあっけなく崩れてしまいました。専門家の意見は今のところ、BA-5への免疫を持つ日本人が少ないことが拡大の原因だと考えられているようです。

 感染拡大がウイルス自体の感染力と人間側の免疫力、感染対策によって決まるとすれば、BA-5は感染力は非常に強い一方、過去と変わらない感染対策を取り、強いて言えば水際対策は緩和されており、経済活動ももとに戻りつつあるのも事実です。しかし、結局は日本人のBA-5に対する免疫が弱い、あるいは持っていないことが致命傷というわけです。

 専門家はそれでも、ワクチンを3回から4回接種した人は免疫があると考えてよく、そこに自然感染によりできた免疫が加わったハイブリット感染で感染拡大は予防できるという理屈です。日本はOur World in Dataによれば、ワクチン接種率は82.4%で決して低い方ではなく、アメリカは78.6%です。 

 そう考えるとBA-5への免疫が日本人はあまりないからというのは、意外と説得力があるのかもしれません。となると行動制限に踏み切ることも視野に入れるべきともいえます。できることはワクチン接種の徹底くらいでしょう。

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