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 28日に閉幕したドイツ南部エルマウでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、ウクライナ支援を継続的に行うこと、ウクライナ危機で深刻化する世界の食料安全保障への取り組みに、中国を除く世界で最も豊かな国々であるG7が45億ドル(約6,100億円)を追加拠出することで合意しました。

 さらに民主主義陣営のリーダー国として、中国の不公正な経済活動や人権問題なども改めて指摘し、民主主義陣営の結束を示すことも忘れませんでした。

 しかし、近年のG7がそうであるようにG7の影響力は低下しており、参加した首脳らは自国のウクライナ疲れが脳裏をよぎり、決め手を欠くものでした。6月23日からの欧州連合(EU)首脳会議、G7、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議と首脳会議が目白押しですが、決定的方向を示してはいません。

 今はロシアの不当な他国侵略戦争で毎日一般市民が犠牲になっており、富裕国首脳が談笑するG7の映像は、今の深刻な状況には似つかわしくないと感じたのは私だけでしょうか。戦争当事国ではないにしろ、第二次世界大戦終結に向けての主要国会議のヤルタ会談やポツダムでの会議の雰囲気は大きく異なっていたことでしょう。

 当時より、はるかに人権意識が高く、人の命を大切にする風潮が高まる時代に、G7の会議の最中にウクライナの首都キーウのショッピングセンターを爆撃され、ロシアに恐喝されたわりには、各国首脳の態度はゼレンスキー大統領が抱える恐怖と危機感からは程遠い印象でした。

 ゼレンスキー氏は映像参加し、ロシアをテロ支援国に認定すべきと訴えましたが、大国との継続的な関係を気にするマクロン氏は、テロ支援国とのレッテル張りを拒否しました。これこそが、今の西側大国の無力を表すものですが、ここで日本人が見落としがちなのは、アメリカへの認識です。

 今も資金面、軍事面で圧倒的にウクライナ支援を行っているのはアメリカで、プーチン批判をトーンダウンさせるマクロン氏が情けない発言をしても、フランス人の多くは仕方がないと思っています。つまり、英仏独伊加は1国ではアメリカに比べれば非力で大したインパクトを与えられないことを知っているからです。

 マクロン氏はウクライナ侵攻後、プーチン大統領と直接、あるいは電話などで最も話をした西側首脳ですが、フランス人の多くは私の取材では「プーチンにとってフランスは大した存在じゃない」という認識をよく聞きます。

 時には利用できる駒とフランスを考えているプーチン氏だとは思いますが、国際政治を動かすメインプレーヤーとは到底いえません。英国しかり、ドイツしかりです。

 つまり、アメリカがそう思っていないとしても、世界の現実はアメリカの存在が圧倒的に大きく、生協力が低下しているのはアメリカ人の国際問題へのコミット疲れとオバマ政権時の超内向きへの方向転換の影響といえます。

 そのアメリカのバイデン大統領が最も強調するのが「国際協調」です。裏を返せば責任の分散です。今回のような緊急時には国際協力が問題解決の鍵を握るという理屈になるわけですが、国際協調はいい直せば自由と民主主義の価値観を共有する国々がチームワークで対処するということです。

 耳障りはいいのですが、チームワークには弱点があります。それは責任の所在が不明確になり、参加するメンバーそれぞれのコミットメントが弱まることです。これはチームワーク理論で心理学の側面でよく指摘されることです。

 つまり「私が多少手を抜いても他のメンバーがやってくれるだろう」という心理です。対ウクライナ支援でも国のサイズに見合った規模でやればいいというのが、その典型です。

 ドイツのキール世界経済研究所(IfW)の報告では、各国のウクライナへの財政、人権、軍事支援額を比較すると、アメリカが圧倒的規模で、次いで英国、ドイツ、カナダ、フランスの順になっています。

 ところが、その規模を各国のGDP比で見ると1位はエストニアで次いでラトビア、ポーランド、リトアニアと続き、G7の国々はトップのアメリカは9位です。

 地政学的理由が圧倒的に多いわけですが、それでも経済的弱小国の負担はあまりにも大きく、大国は高みの見物という印象です。それもバルト3国やポーランド、チェコ、ルーマニアがロシアへの警鐘を鳴らし続けているにも関わらず、西側の反応はノロノロです。

 これが国際協調の結果です。大国は支援金額が大きく見えるためにコミットしているように見えますが、大して犠牲にはなっていません。フランスやドイツのテレビが「そんなにウクライナに武器を提供したら自国を守れなくなる」との懸念も伝えています。

 国際協調の前にすべきは、物事の優先順位を決めることで、それはリーダーに与えられた最大の責任です。ところがG7は優先順位を決めるほど機能しているとはいえません。これでは独裁国家に勝つことはできないでしょう。特にバイデン氏のリーダーシップのなさは深刻です。