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 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、独紙ビルト紙上で、ウクライナでの戦争は「数年間続く」恐れがあると警告しました。NATOトップの認識がウクライナ危機の終息は短期では困難という認識を示した以上、長期化の可能性が確実に高まっているということでしょう。

 すでに米欧首脳は「ロシアを戦争で勝たせるべきではない」という認識を明確にしており、同事務局長は、ウクライナの最前線に最新鋭の重火器の供給がさらに必要と訴えています。

 NATOからウクライナを守ることを大義名分化してウクライナに侵攻したロシアと西側の戦いは、双方ともに妥協は選択肢にないように見えます。

 そもそもNATOは旧ソ連時代からのロシアの脅威に備えた軍事同盟なので、ロシアの暴挙を容認する選択肢はありません。ロシアがポーランドやバルト3国などNATO加盟国に軍事侵攻すれば、全面戦争は自明の理です。

 西側はロシアの暴挙を見逃す気はなく、全面戦争は回避しながらも妥協もしない戦いです。

 今のところ、西側による経済制裁は大きな効果を生んでいるようには見えません。米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「ロシアに対する制裁は、エネルギー価格高騰という予想外の恩恵によって相殺され、十分な経済的痛みを与えられずにいる」と指摘しています。

 さらに「ロシアの戦争遂行努力を妨げ、プーチン大統領を交渉の席に着かせる狙いはうまくいっていない」とも書いています。ただ、ロシアがこの制裁にどこまで耐えられるかは疑問ともいっていますが、中東、アフリカ、インド、中国、南米は制裁に加わっていません。

 もう一つわれわれが直面しているのが、世界経済が景気後退局面に入っているということです。最新の調査では、アメリカの経営幹部の15%が事業を行う地域(国外を含む)が景気後退に直面している考えており、60%以上が1年〜1年半以内に景気後退入りすると予想しているとの結果も出ています。

 インフレ上昇を食い止めるためにアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は金利引き上げに動いていますが、景気後退入りが本格化すれば、金利引き上げ策の変更を迫られるのは必至です。

 エネルギー価格もロシア依存度を急速に減らすための供給元確保及び輸送体制を整備するのに時間が掛かります。石油や天然ガスへの依存度を下げることは地球温暖化対策の柱ですが、代替えエネルギーへの意向を加速する必要もあります。

 ウクライナ危機で小麦粉などの国際輸送が極端に制限されている中、すでに食糧危機があちこちで起きています。グローバル化で抑えられていたモノの価格が上昇し始めており、世界的景気後退も確実なように見えます。

 コロナ禍でグローバル化のデメリットがある程度リセットされたといえ、まったく十分とはいえず、米中貿易戦争も集結したわけではありません。コロナ禍で受けた経済的システムへのダメージに戦争と景気後退が襲う状況です。

 しかし、危機はチャンスでもあるのも確かです。トランプ前米大統領が対中強硬姿勢を示さなければ、今頃は全米に中国式社会主義が浸透し、多くの企業が中国に買収されていたでしょう。

 ウクライナ危機も景気後退も、溜まっていた膿を出すことに利用すべきでしょう。この機会に覇権主義、権威主義の妄想を世界から完全に一掃できないとしても、大国に諦めさせるきっかけになることを願うばかりです。