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 われわれは、コロナ禍で地球上に住む人間すべてが同じ体験をする珍しい体験をしています。以前、取材した自然しかないようなアマゾンの奥地に住む人々でさえ、マスクをしている姿に驚かされました。そして、今度は独裁者が他国への軍事侵攻の暴挙に出る状況を全ての人類は目の当たりにしています。

 この暴挙は他の権威主義の国へ連鎖する可能性もあり、世界中、さまざまな地域でコロナ禍に次ぐ危機が迫っています。コロナも最初はそれほどの危機感を持たなかったわけですが、戦争の危機も実際に起きてみるまでは危機を感じないようです。

 バイデン米大統領は最近、アメリカがロシアの軍事侵攻を2月24日のウクライナ侵攻より、かなり前にウクライナに警告したにもかかわらず、真剣に受け止めなかった発言したことが報道されています。

 この発言はまったくの責任転嫁で、むしろバイデン氏が「ロシアが侵攻してもアメリカは軍を送らない」と発言したことこそ、プーチン露大統領にゴーサインを出したといえます。

 それはともかく、誰でもリスクは避けたいものです。リスク分析は科学的アプローチだけでなく、それを感じる研ぎ澄まされた感性が必要です。今回のウクライナ危機は、あらゆる専門家の指摘を分析しても、プーチンの独裁的決断と彼の私怨がかなり影響していることは明白です。

 独裁はリスクであるだけでなく、敵視すべきものです。なぜなら独裁者の支配による弊害の歴史的教訓から民主主義が生まれたからです。では民主主義はどう機能するかといえば、権力を持つ者が独善に走らないために批判的精神を持つことです。

 無論、批判のための批判や私怨は何も産み出さない破壊行為ですが、目的観を持った批判、つまり、より良い結果を導き出すための批判は重要です。それは組織にとどまらず、個人の中でも目的意識を持って自分自身を批判することは重要です。

 そして、このクリティカルシンキング(批判的思考)の核を成すのが、優れた質問を投げかける能力といわれています。優れた質問は、謙虚さをべースにしながら、自らの好奇心と真摯に向き合い、相手の話を傾聴し、問題を掘り下げていく中で生まれるといわれています。

 難問解決には、情報収集だけでなく、深い分析が必要です。しかし、それは袋小路に入ったり、結果として独善に陥り、最悪の結果をもたらしたりすることもあります。

 そうならないためには深い思考が必要で、その手助けになるのがクリティカルシンキングを支える質問力といわれています。

 日本人は一般的に批判精神は西洋人に比べてないといわれています。理由は和を持って尊ぶことが優先され、人間の関係性が険悪なる恐れのある対立を悪と考えていることがあります。

 同時に議論する時に何かより良い結論を出すという目的意識よりも、発言者個人の人間の優劣に意識が行く傾向も考えられます。

 クリティカルシンキングが効果的に行われるためには、自分や相手を潰してしまうような批判は絶対に避けることが重要といわれています。あくまでも事態を改善する目的から離れないということです。

 人間は間違いを犯すもので反省し、正確に分析し、教訓にすべきであって自虐的になっても意味はないからです。

 たとえば、日本には謝罪文化があって、失敗した部下が上司に謝罪することは頻繁に起きますが、アメリカでは「謝るのは弱さの表れ」といいます。

 「謝るくらいなら改善策を示せ」という訳です。上司に謝っても事態は何も変わりません。

 クリティカルシンキングは、建設的なポジティブ思考でなければならないということです。自己批判も前向きに改善や問題解決を離れた批判は毒になるだけだということです。