20220523_081821_2
 凄くウクライナ危機を意識したわけではありませんが、色合い的にはウクライナの国旗に近い最近私が描いたパステル画です。蝶は平和のシンボルと感じています。

 私の嫌いな言葉に「巻き込まれる」という表現があります。自分の意思に関わらず悪い状況に追い込まれるような時に使いますが、何が嫌いかというと超受け身な考えだからです。人間自分の思い通りになることなどそれほ多くはありませんが、それでも責任転嫁だけはしたくないものです。

 連日、ウクライナ情勢が報じられない日は2月14日にロシア軍がウクライナに侵攻して以来、1日もありません。ニュースの優先順位は戦争、殺人、大規模自然災害など人の命と関わるものが最も高いわけですが、日頃、人道主義を標榜するヨーロッパは報道はしても見物状態です。

 毎日、人が死に建物が破壊される惨状を見ながらも、相手が世界で最も核兵器を所有するロシアなので、全面戦争、核戦争を恐れてヨーロッパは直接的な軍事行動は絶対にしない構えです。

 その一方で40万人以上の犠牲者を出したシリア内戦はウクライナ危機よりは報道の扱いが低かったのは、犠牲者がウクライナのように白人でないからかもしれません。

 世界のジャーナリズムを支配しているといわれるユダヤにとって人間の価値がないアラブ人より、ユダヤ系白人の多いウクライナに報道の優先順位があると疑りたくなります。

 しかし、日本ではあまり指摘されませんが、第2次世界大戦後、大規模な戦争が起きていないヨーロッパは、この20年で兵役を廃止する国も増え、実は平和ボケしています。

 逆に中立を保ち自主防衛が必要不可欠だったフィンランドなどは、1300キロにわたってロシアと国境を接している緊張感から有事を常に想定しています。

 フィンランドは現在、西欧では最大規模となるカノン砲1500基を保有し、最新鋭のアメリカ産地対空ミサイル(SAM)も購入済です。

 近年はサイバー戦争に備え、欧州諸国で有数のサイバー防衛軍を持ち、18歳以上の男性には兵役を課しています(女性は志願制)。拒否すればパスポートの発給は止められ、国外逃亡もできません。

 フランスを初め多くの西欧諸国は兵役を廃止し、国防費を削減し、諜報活動も予算が削減され、国民の平和ボケが進んだ現実を抱えています。ロシアの脅威にさらされるヨーロッパにとってフィンランドのNATO加盟は、実はヨーロッパにとってはとても心強い助っ人が加わることになります。

 フィンランド人の根底には「自分の国は自分で守り抜く」という強い信念があり、それは冷戦終結を受け、政治的中立を捨てて欧州連合(EU)に加盟した1995年以降も防衛体制を変えていないことに表れています。

 フィンランドは今年、軍事費を国内総生産(GDP)比1.96%まで引き上げました。2020年は1.34%、2021年は1.85%でNATOが目標とする2%まで、あと一歩です。

 アメリカのトランプ前大統領がNATOへの分担金を増やすことを要求しても応じようとしなかった西欧大国とは対照的に、フィンランドは確実に軍事費を増やしてきました。

 アメリカの最新鋭ステルス戦闘機「F35」64機(約94億ドル相当)の購入契約を正式に交わし、包括的な安保体制の下、戦時には正規兵28万人の動員が可能で、さらに60万人の予備兵を準備しています。

 「国民1人当たりでみると、欧州で最大級の兵力となる」と米ウォール・ストリート・ジャーナルは書いています。

 それでもロシアと戦うためには、あるいは軍事的脅威を抑止するためには、核兵器を所有する米英仏が加盟するNATOに入ることは不可欠と今回判断しました。

 NATOののストルテンベルグ事務総長は5月24日、スイス・ダボスの世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)で「経済利益より自由を優先する戦いだ」と述べ、ロシアや中国と価値観において決定的対立をもたらす発言を行いました。

 しかし、自由の価値観を守るために命をかけるかといえば、せいぜいウクライナに軍事物資と資金を提供する程度で、血を流す用意はありません。蛮行を重ねるモンスター化したロシアの犠牲の際物にウクライナをしたまま、犠牲となる一般市民を見ながら放置しています。

 諜報活動もアメリカに頼っているのが現状で、戦後、アメリカに頼りすぎて自主防衛の意識が薄れ、今ではアメリカまで含め、戦争に「巻き込まれたくない」という思いが先行しているように見えます。この煮え切れない腰の引けた欧米の態度が、ますますロシアを強気にさせているようです。

 人道主義で正義は守れないことは、中国の新疆ウイグルの弾圧への口先だけの批判で効果がないことは明らかです。犠牲になり、手を汚してでも戦争を止める覚悟がある指導者が不在していることこそ、最も深刻と日々感じています。