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 剛腕の指導者の周辺にはイエスマンしか残らず、結果、自滅のパターンが多いのが歴史の常といわれています。それは国家であろうと組織であろうと同じですが、よくあるのは独裁化した1人の人物を100%支える家来がいて、反対する者を次々に排除し、体制を整えるパターンですが、意思決定から客観性はなくなります。

 たとえば、中国の習近平国家主席は、国家の体制そのものが専制主義なので独裁化し易く、文句のある人間は汚職などの理由で逮捕し、排除しています。ゼロコロナ政策を世界保健機関(WHO)からも批判されていますが、国家主席は間違った意思決定をしないことになっているので変更はできません。

 ユダヤ人は会議で全員が賛成したら、決定を見送るといわれています。反対意見がないと決定に客観性が持てなくなるからです。4000年の歴史を持ち、流浪しながらも生き延びてきたユダヤ民族の自滅しないための知恵の一つといわれています。

 今、ロシアのプーチン大統領周辺で起きていることは確認のしようがないため、明確な分析はできません。確認のできないことに想像でモノをいう専門家があまりにも多いことに辟易しているので、分析はしたくはありませんが、毎日、価値が破壊され、人が死に拷問やレイプが日常化しているウクライナの地獄絵の報道を見ると「本当は何が起きているのか」と考えざるを得ません。

 リーダーシップやマネジメントを専門に日頃コンサルしている私としては、プーチンに起きているパターンは典型的な独裁者の末期症状を疑りたくなります。なぜなら、この戦争は最初から謎が多く、世界中の戦争の専門家や諜報機関がロシア軍の戦い方に疑問を抱いているからです。

 そもそも今回の戦争は国対国の戦争ではなく、ウクライナに軍事侵攻したロシア軍をウクライナ軍が防戦し、追い返そうとしている戦いです。圧倒的な戦力と財力を持つロシア軍に対して、防戦する側がロシア領土に踏み込むことはありません。

 一般常識から考えて、ピンポイントでウクライナ領土の外から軍需施設や発電所、給水システムなどを効率的にミサイル攻撃すれば、ロシア軍は圧倒的優位のはずです。

 それも衛生もあればドローンもあるハイテク戦争のはずなのに、破壊しても戦争の勝利とは大した関係のない学校や病院をミサイル攻撃しているのは、まるで20世紀か19世紀の戦い方です。

 まるでロシアの相手は最初から欧米先進国が本当の敵で彼らをいら立たせ、最終的にロシアが主張する北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を行わない保障を得るのが目的のようにも見えます。それが目的だとしても戦争は効果的、効率的に行い成果を出すべきですが、そうなっていないようです。

 戦いに勝って成果を出すためのリーダーシップに不可欠なのは、戦いの大義名分、すなわち勝利がもたらす国家利益の目的(パーパス)です。愛国心を醸成し、プーチンのもとで国民を統合させ、偉大なロシア帝国再建をめざしているといわれています。そのためにはかつてソ連邦の中の大国だったウクライナがヨーロッパに逃げていくなど言語道断です。

 同時に兵士には具体的なミッションが必要で成果を出す戦略が必要です。その戦略の前提は現状把握、現状分析です。最初から勝てない戦争をした日本もそうですが、どんなに立派なパーパスやヴィジョンがあっても結果を出せない戦いは意味がありません。

 そこで重要になるのが現状把握、現状分析をもたらす部下たちの正確な情報です。リーダーシップやマネジメントが機能不全に陥る原因の一つは、部下が妄想に取りつかれた強権を持つリーダーに恐怖を感じ、保身のために嘘の報告をし、作り話をすることです。リーダーは嘘の情報の上で意思決定を下し自滅するパターンを辿るわけです。

 ヒトラーも自分が描く第三帝国の妄想と彼が持つ連合軍に対するナチスドイツ軍の戦力への過信、批判されることのない戦術・戦力によって裸の王様になっていったことで滅亡の道を辿ったと見られます。今のプーチンもロシア軍の現状及びウクライナ軍の戦意を見誤ったことで成果が出ていないように見えます。

 専制主義、権威主義の非現実性は「トップに立つ者が間違うことはない」という間違った認識です。権力にしがみつく独裁者の客観性を失った独善的意思決定、強権の下で利益を得ようとする部下たちの嘘や裏切りには腐敗がつきものです。
 
 とはいえ、独裁国家も滅亡までには時間が掛かります。ソ連帝国は70年以上掛かりました。中国は同じような年月を経ても滅んでいません。そんな21世紀にわれわれは生きているというと希望がありませんが、少なくとも権威主義の間違いに気づいている側ができることを確実に実行することは重要です。