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 世界遺産認定機関であるフランス・パリに本部を置く国際連合教育科学文化機関、ユネスコは国連の文化財保護の中心に位置します。そのユネスコがロシア軍のウクライナ侵攻によってウクライナ国内の少なくとも53の文化施設が全壊または半壊の被害を受けたと報告しました。

 無論、この数字は暫定的で、予想ではこの数倍はあると見られています。ウクライナには、キエフの聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群及びキエフ・ペチェールシク大修道院など、7つが世界遺産に登録されていますが、ロシアやポーランドなど近隣諸国に広がった遺産も含まれています。

 これらが無事かどうかの確認はされていませんが、世界遺産の破壊といえば、アフガニスタンの文化遺産『バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群』の仏像遺跡群が2001年にイスラム根本主義のタリバン政権に破壊されました。2003年に世界遺産に登録されると同時に危機遺産に登録され、日本が修復に関わったことを思い浮かされました。

 遺産というと歴史が残した人類にとって重要な価値を持つ物と思いがちですが、今は歴史は綴られており、仏教を排除しようというタリバンが遺跡を破壊する行為が今の時代にもあるということです。ウクライナへのロシアの軍事侵攻によって文化財が破壊されている現在進行形の現実も歴史として刻まれているということです。

 ユネスコが4月1日に発表した報告は、衛星画像やウクライナ政府の報告、現地の報道などを分析したもので、29の宗教施設、16の歴史建造物、4つの美術館、4つの記念碑が特に被害を受けたとしています。

 2月24日のロシア軍によるウクライナ侵攻が始まって以来、ウクライナでは少なくとも53の文化的施設が被害を受けたと報告した一方、提示された被害リストは「すべてを網羅しているわけではない」と説明し、「われわれの専門家は、多くの報告を調査し続けている」と付け加えました。

 報告では、特に被害が大きいのはウクライナ北東部の同国第2の都市、ハリキウ地域で、ロシア軍による激しい砲撃を受け、18の文化施設が破壊されたとしています。同リストには、ロシア軍によって包囲され、今も爆撃が続く同国南東部マリウポリや、ロシア軍によって制圧されている南部ヘルソンに関する情報は含まれていないとしています。

 ユネスコのスポークスマンは報道陣から「この破壊がロシア軍によるものか」と尋ねられ、「われわれが確認できたこれらの53のサイトには、ウクライナ当局による報告が含まれる」と答え、モスクワが非常に重い責任を追っていることを示唆しました。

 ロシアは、武力紛争が発生した場合の文化財保護のために1954年に制定された国連条約に署名しており、「これらの条約に違反した場合、その加害者の国際的責任が発生する」と、ユネスコのオードレ・アズレイ事務局長は3月17日にロシアのラブロフ外相に送られた手紙の中で伝えたことを明らかにしています。

 ロシアは他国に軍事侵攻することを禁じた国際法に違反し、それも過去にもジョージアへの侵攻、2014年にはウクライナ東部へ軍事侵攻し、クリミアを併合しています。さらに今回は文化財の破壊行為を実行し、国連条約に違反しています。

 このような国が国連安保理の常任理事国5か国の1国となっている状況は、国連の機能不全は脳死状態といわざるを得ません。戦後、戦勝国を中心に作られた国連は70年以上経ち、改革でき名なら1つの時代の役割を終えたと考えるのが妥当と思われます。

 犯罪国家が世界の安全保障の中心メンバーというは怒りを通り越して笑うしかない状況です。莫大な予算をかけて、大国のロシアや中国、インドが恩恵を受け続けている現状は、まったく意味がありません。この混乱は主義主張の違いではなく、間違った民族主義、覇権主義を加速化する権威主義国家群の脅威に世界が晒されている深刻なものです。

 人類がもし、歴史から学ぶものがあるとすれば、まずは犯罪国家を主要メンバー国にして機能不全に陥っている国連は改革などではなく解散し、新たな国際組織を創設すべきでしょう。その加盟国から権威主義国家を徹底排除すべきでしょう。

 少なくとも欧州連合(EU)は、そのひな型を模索してきました。EU加盟国内で戦争は起きたことはありません。歴史遺産の破壊行為も起きていません。多民族国家のアメリカにも多文化共存のひな型がある訳で、叡智を結集すれば、新たな国際組織を発足させることも夢ではなくなるでしょう。

 愚かな戦争で民族浄化に踏み出し、敗北したドイツ、アジアの覇権を夢見て最後は勝てもしないアメリカと戦争して原爆を落とされた日本は、戦争の愚かさと平和を学びましたが、悪の勢力と戦う術は持っていません。今は他国を侵略し、一般市民への無差別攻撃を行い、文化財を破壊し、人権を著しく犯す行為を絶対許さない世界的組織が必要な時代でしょう。

 世界は、あまり役に立たない国連と並行して自由主義陣営の大国アメリカが警察官としての役割を持って何とか悪を抑え込んできましたが、アメリカがその役割を放棄する中、次は国連自体の解散と再建が求められているということです。無論、それもナイーブな考えだという指摘も否定できませんが、人類はそこまで愚かなのかと思いたくないものです。



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