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 アメリカ上院の諜報委員会トップ共和党のマルコ・ルビオ上院議員の2月28日の発言が話題になっています。それはロシアのプーチン大統領の精神状態についての報告を受けているという話です。

 彼は「もっと共有できればいいのだが、今のところ、プーチンの何かがおかしいことは多くの人にとってかなり明白だと言える」とツイートしました。オバマ政権時代の駐ロシア米大使だったマイケル・マクフォールも、ロシアの指導者が「変わった」ことにも気づいたとツイートし、関心を集めています。

 自治は世界中のロシア関係の専門家は、今年に入ってからのプーチン氏の姿を持て、同じような印象を持っているとされています。私自身も何か強迫観念に襲われ、それが限界に達した状態で理性を失い、感情的になり、妄想に囚われているように見えます。

 そもそも、アメリカ国防総省の総合評価局(ONA)は、プーチンの精神状態を調査する研究を2008年から実施し、2015年には米メディアで調査結果が明らかになりました。それによると「彼のすべての決定には自閉症の障害が影響を与えている」と推測されていました。

 調査に参加した研究者たちの中には、アスペルガー症候群の指摘もあり、それは脳スキャンを行わなければその理論を証明することはできないので無理だとされています。分析はプーチンのビデオに基づいており、かなり精査されたとされる一方、今回のプーチン氏の変化は立証されていません。

 英ガーディアン紙など、複数のメディアが「プーチンが壊滅的な新しいヨーロッパ戦争を開始するという決定は、彼の最近の公の姿のまったくの奇妙さと、6,000発の核弾頭を持つ国の指導者の精神的安定性について疑問が投げかけられている」と指摘しています。

 フランスの大統領府はプーチンの演説について「パラノイドだ」と指摘したのも同じような評価です。「プーチンは激怒している」「彼は狂人だ」(チェコのミロシュ・ゼマン大統領)と指摘し、他の外交官は「記者会見を見ている私たちのすべてのロシアウォッチャーは、彼がさらに専制的な考え方に陥っていると考えている」と述べました。

 ロシアは中国と異なり、共産主義を捨て共産党幹部だけが特権階級だった時代の専制主義体制は終わらせたはずでした。ところが通算18年間も大統領の座にある巨大な国土を持つ国を率いてきたプーチンは、8カ月後には70歳を迎える年になり、ある専門家はシェークスピアのリア王に譬えています。

 年老いたリア王は判断力を失い、自分に胡麻をする2人の娘に全財産を与え、率直な物言いの3女を追放したが、結局は長女も次女も最初から裏切るつもりだったため、悲劇王になってしまった話です。現実に対する理解は失われ、妄想が支配し、帝政ロシアの夢を果たす偉大な王になろうとしているという見立てです。

 ほとんどの周囲の人間が絶対権力者に対して、肯定的なフィードバックしかしなくなり、本人もネガティブな意見を嫌い、結果的に広大な国に対して完全な権力を持っていると誤解する老化による妄想の危険がプーチンにも忍び寄ったと見る見立てです。

 欧米文明国の歴史の教訓は、リア王の例を待つまでもなく、専制主義の絶対権力者の末路は国同様、悲惨なものでしかないという結論です。だから、欧州で王政が維持されている全ての国では、英国だけでなく「君臨すれども統治せず」なわけです。

 それも権力者だけでなく、権力者の周辺にいる者も長期にその座にいることはリスクが高すぎるとして交代させるのが欧米では慣習化されています。これはあらゆる組織にもいえることで、権力は毒であり、長期に維持していい試しはないといえます。