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 コロナ禍後の景気回復途上にある欧米では、人手不足が表面化しています。そのため、アメリカでは被雇用者の売り手市場となり、転職前に待遇やポジション改善を上司に要求したら、すんなり要求が通った例が増えているそうです。

 米国の労働者1万4000人余りを対象に行ったギャラップ最新調査では、転職を「積極的に考える」と答えた割合が48%と2019年の46%から上昇中と米メディアは伝えています。昨年11月には米国の自発的な離職者が過去最多を記録したそうで、コロナ禍から経済回復で雇用機会が増えていることも影響しているのは明白です。

 ところが、離職前に待遇改善を要求するのは日本では稀なのに対して、欧米だけでなく、アジアでも普通に行われています。無論、成功率は高いとはいえないものの、今では日本でも最近、知り合いが上司に離職を考えていることを相談したら、配置転換で地方から本社勤務になり、さらには給料もアップしたという話を聞いたばかりです。

 グローバル研修の1つにナショナルスタッフが組合ではなく、個人で上司に待遇改善要求する事例を検討することがあります。何でも駄目元で交渉する文化が存在する日本以外の国では、組織に従順であることより個人が優先される場合が多い現実があります。

 特にナショナルスタッフにとって日本企業などの外資系企業に勤める場合は、会社への忠誠心は薄く、待遇は働く上での非常に大きなウエイトを占めます。

 無論、待遇は給料だけでなく、適切なポジション、適切な評価、自分のスキルアップの役立っているかどうか、労働条件、職場環境などトータルなものですが、個人で交渉する場合は、そのすべてが交渉の俎上に上ります。

 ここで足かせになる日本の慣習に、上司や会社が社員1人1人の評価を明確化しないことが多いことがあります。特にポテンシャルの高い社員に対して、それを個人に伝えることはほとんどありません。海外赴任の辞令が下りた社員が「自分を期待しているのか」「自分が邪魔なのか」と葛藤する例は少なくないのが現状です。

 こんな不透明さはグローバル人事マネジメントではありえません。なぜなら様々な価値観館、文化を持った多文化環境のマネジメントでは、見えにくいものは非常に多く、見える化は至上課題だからです。暗黙の了解、斟酌は通じないだけでなく、仕事の効率化を大きく妨げる要因です。

 この数年、アジアの高度スキル人材が最も働きたくない国が日本だというのは、この透明性のなかにあります。日本に残る職人文化、主従関係、我欲の否定は独立した個人という考え方を希薄にしています。ここを改善できなければ、韓国や台湾に経済力で抜かれるのは秒読みといえるでしょう。

 逆に自分の評価を明確にしたい社員の方が自身や向上心があるということです。たとえば日本で外資系企業の方が仕事へのプレッシャーが厳しいといわれますが、それは人の伸びしろよりもその人の能力に見合った給与を払っているので厳しいのは当たり前です。 

 日本の職人文化は伸びしろに期待しながら、最初は薄給から始まるわけですが、誰もが成長できる有能な社員というわけでないだけでなく、上司の機嫌を取るような社員が昇進するリスクもあり、それが今の無能なリーダーを産む欠陥のある人事システムにも繋がっています。

 今は政治もビジネスも世代交代が急がれています。長幼の序を大切にする儒教文化の濃厚な韓国でさえ、世代交代は急激に進んでいます。韓国最大野党「国民の力」の党首に36歳の若き政治家が選出される時代、日本だけが年功序列を続けているのは国の劣化の何ものでもありません。

 既得権を守ろうとする老害世代は、若い時に薄給に耐えて会社に忠誠を誓い、最後は高給を手にする役員や手厚い退職金をもらうパターンの生き残りです。終身雇用も年功序列も雇用契約書にはそもそも書いておらず、暗黙の了解事項でした。

 時代の変化が彼らに都合が悪いのは事実ですが、彼らが企業の成長を邪魔し、倒産に追い込まれれば身も蓋もありません。福祉団体ではないわけですから。

 人の成長を見守る姿勢も大切ですが、それも評価と共にきっちりキャリアパスとして社員に示さなければ、有能な社員ほど会社を去っていくでしょう。今は誰がやらなくても自分がやるというモチベーションを持った人材が最も求められる時代です。