Joe_Biden_and_Vladimir_Putin

 2022年は戦争の年になるかもしれない。無論、それは絶対に避けなければと思いますが、大国アメリカで歴史的に外交が得意でない民主党が政権を握るバイデン現政権が、トランプ前政権のように戦争を起こさなかった政権になるかどうか、極めて怪しい段階に入っています。

 トランプ政権への批判は、アメリカの国内外で聞こえていますが、アメリカ第1主義の国益最優先の外交を展開したトランプ氏の交渉姿勢は「ディール」といわれていました。古い外交専門家は軽蔑していましたが、実はディールという考え方が、相手に軍事行動を起こさせなかったのも事実です。

 この影響は大きく、今では人権などの原則論の建前外交に終始した欧州でさえ、外交手法に変化があります。ディールは互いの利益追求を目的としたWinWinの関係構築が目的です。原則外交は妥協できない点が前面に出てしまい、いいか悪いかの争いになり、相手の利益に注目しようとはしません。

 結果的に勝つか負けるかの交渉になり、追い詰められた方は最終手段である軍事行動に出る選択肢しかなくなる場合もあります。無論、最初から軍事行動を視野に中国が台湾に侵攻するとか、ロシアがウクライナに侵攻する、あるいはイランが中東で他国を軍事的に脅かす選択肢がかなり優先順位が高いとすれば、その交渉はハードなものになるでしょう。

 世界が注目している台湾、ウクライナ、中東、さらにはカザフスタンを巡るロシア、中国の対立など、今年は戦争や内戦に発展しそうな不安定要素、緊張状態にどう立ち向かうかが大きな課題です。コロナ禍で傷んだ経済の回復期に戦争が起きれば、経済だけでなく、さまざまな分野でダメージが想定されます。

 バイデン外交の基本は国際協調です。トランプ前政権は同盟国まで敵に回し、信頼関係に亀裂が生じたわけですが、アメリカが世界の警察官でもなければ、圧倒的な経済力、軍事力を持って世界の安定のために貢献する国でもないというスタンスからすれば、当然の行動だったともいえます。

 ポンペオ前米国務長官は就任時にトランプ氏の意向を確認し、「トランプ氏は冷戦終結後に作られた世界の枠組みを完全リセットする強い意志を持っている」と語りました。自由と民主主義、法による支配というアメリカと同じ価値観を共有する国々が過度にアメリカに依存している状況を変えようとしたことに表れています。

 その一方で、オバマ政権ですっかり世界に対する存在感を失ったアメリカを「再び偉大にする」ために、中国、北朝鮮、ロシアなど価値観を共有できない国々とのディールを重ね、戦争を回避しながら国際秩序維持に貢献しようとしたのがトランプ政権でした。

 北朝鮮に対して、もし戦狼外交をやめ、核兵器開発の中止という米国の要求に従えば、北朝鮮は高いポテンシャルを持った国として飛躍的に発展するだろうと持ち掛けたのがトランプ政権のディール外交でした。善か悪かが表に出てしまえば、相手は保身に走り、態度を硬化させるだけです。

 相手にポジティブなビジョンを与えながら、ネガティブな部分を消していくアプローチは、今では世界に広がっています。フランスは北京オリパラの開会式への政府関係者不参加のバイデン政権が主導する政治的ボイコットに加わらないことを表明しました。

 新疆ウイグル族への人権弾圧に対しての抗議が目的の政治ボイコットですが、ロシアのソチオリパラでプーチン政権が同性愛者の選手の入国を制限したことに抗議して同様な政治的ボイコットを欧米諸国の首脳が行いましたが、一体、どんな効果があったかを考えると極めて限定的です。

 そもそも完全に政治色を排したスポーツの祭典であるオリパラに各国首脳が参加する意味はあるのでしょうか。面子を重んじる中国に恥をかかせる目的ともいえますが、経済成長した中国は今では世界を上から目線で見ているので、面子を潰されたとも思わないでしょう。

 国際協調といっても見返りが必要です。アメリカに追随してもいいことがなければ犠牲を払ってでも協力することはありません。途上国が台湾との外交関係を解消し中国に流れているのもアメリカの支援が弱いからです。ここでもアメリカのディール力が問われるわけですが、バイデン原則外交では効果薄です。

 バイデン政権に交渉を任せていては、世界は戦争に陥る可能性が高まっています。小国でもノルウェーのように仲裁国家として実績を上げている国もあります。力による古い外交姿勢と理念中心の原則外交が目立つバイデン外交だけでは、世界の安全は守れない状況だと思います。