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 南太平洋の島国トンガの沖で15日に発生した海底火山の大規模な噴火は、日本やアメリカ西海岸に打ち寄せる津波で注目された一方、現地からのニュースが入ってこないことに世界はもどかしい思いをしました。その原因の一つが噴火による海底ケーブルの損傷で、トンガは海外との通信の大半が遮断されたからでした。

 報道によれば、トンガは海外とのインターネットや国際電話を隣国フィジーとの間の海底ケーブルに頼っており、今回はトンガ政府や民間の通信企業が出資する「トンガ・ケーブル」が損傷したことで通信手段が奪われたと指摘されています。

 われわれの生活は限りなくバーチャルな空間に向かい、一瞬にしてSNSを通じてメッセージや写真、動画が拡散し、世界中で買い物ができ、情報収集の容易で、何でも時間、空間を超えて簡単に手に入れることができる世界に住んでいるかのようです。

 ところがそれを支えるのは通信インフラで、今回は今、最も注目されている海底ケーブルで事故が起きました。

 そもそも世界で最初に携帯電話が普及したフィンランドは国土の多くが冬に凍土と化し、人間の命を守る通信インフラで地上の配線に限界があることから生まれたといわれています。基地局さえ設置すれば配線不要という強みは通信手段の可能性を一気に広げました。

 今やインターネットから隔絶された生活など考えられない高速通信5G時代が到来していますが、データを転送するトラフィック・インフラに支えられています。特に国外の海をまたいだ遠距離のトラフィックを支えている縁の下の力持ちといわれるのが海底ケーブルです。

 現在、世界の海底に張り巡らされた海底ケーブルの長さは約130万km、地球およそ30周分以上といわれています。世界の距離を一挙に縮めたネット空間は、実は地味な物理的配線が海底にあることで支えられているというわけです。今回のトンガ噴火は、その現実を思い知らされたといえます。

 日本のNECは2018年3月、日本、韓国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、カンボジアおよびシンガポールを結ぶ大容量光海底ケーブル敷設プロジェクト、Southeast Asia-Japan Cable 2(SJC2)のシステム供給契約を締結しました。

 受注先は、KDDIやシンガポール通信最大手シンガポール・テレコム(シングテル)などグローバル通信社からなるコンソーシアムで、昨年完成しました。今やデジタルインフラ事業は、世界中のインフラ事業の大きな柱になっており、この分野の成長はうなぎ上りです。

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は1月18日付の記事で「光ファイバーケーブルは、国際的なインターネットのトラフィックの95%を伝搬し、実質的に世界中のほぼ全てのデータセンターをつないでいる」と指摘し、海底ケーブル敷設事業に大手IT企業が群がっていると書いています。

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   WSJから

 それも最近まで、敷設された海底ケーブルの圧倒的な部分を通信会社や各国政府が管理し、利用していたのが、「ここ10年足らずで米IT大手4社――マイクロソフト、グーグルの親会社アルファベット、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コム――は、海底ケーブルの伝送容量を支配する有力ユーザーとなった」とWSJは指摘しています。

 「2012年以前は、世界の海底ケーブル伝送容量に占めるこれら企業の割合は10%に満たなかった。だが現在、その数字は約66%に達している」と巨人IT企業のデジタルインフラ部門支配が急速に進んでいる実態を書いています。

 当然ながらこの分野には専制主義の中国やロシアが注目しているのは当然と思われ、通信インフラの安全保障の主要課題になりつつあります。

 一方、海底ケーブルの不具合は今回のトンガだけでなく、この10年を見ても頻発しており、管理運営を含め、課題も多いことが指摘されています。巨額の資金が動くデジタル海底ケーブルインフラですが、IT企業4社の参入で、今や海底ケーブル事業を得意としてきたNECなどが苦境に立たされているともいわれています。

 IT4社にしてみれば、自社が投資したケーブル利用で高額の利用料を払う必要がなくなり、さらに利益を生むことができるため、彼らの海底ケーブル事業への参入は今後ますますを規模をを増すといわれています。

 しかし、通信インフラはライフラインであり、今回のトンガのような事故は人間の生命財産を脅かしたのは事実で、安全性、被害に遭ったケーブルとは別のルートを利用する仕組みなどが課題です。