
現在、世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」。各国政府はクリスマス休暇を台無しにするロックダウンや激しい抗議デモ覚悟のワクチン接種義務化に踏み切り、海外の往来を一時的に禁止するなどの措置に出ています。しかし、オミクロン株の危険性については重症化率が低いとの見方も強まっている。
米ウォールストリートジャーナル(WSJ)も引用している英スコットランドと南アフリカで新たに公表されたデータによれば、「オミクロン株の感染者が入院に至るリスクはこれまでの変異株の場合よりもはるかに低いことが示された」との指摘が世界中に広がっています。
一方、オミクロン株はワクチンによる免疫力を回避する能力を備えているので、感染者は急増する可能性が高く、結果的に入院者数も増え、医療体制を圧迫するリスクも明白と指摘されています。感染者の数が増えれば重症化や死者が出る可能性も高まるという話です。
そもそも昨年来、新型コロナウイルスの感染が死因とされる死者数には専門家から疑問の声が上がっていました。つまり、高齢者が持病を持った人たちはコロナ感染で免疫力がさらに落ち、さまざまな合併症で亡くなる可能性が高く、死因の中心にならないケースも少なくないからです。
オミクロン株自体がワクチンでできた免疫をすり抜ける能力が高いという指摘からすれば、今まで同様、高齢者の重症化リスクもあるわけで、重症化を防ぐためにはワクチンが有効である一方、「科学者らは大幅な感染拡大に伴い、病人や死者が出る恐れがあるとして警戒している」とWSJは指摘している。
結果としてエディンバラ大学の研究者は査読前の論文で、オミクロン株について、高い感染リスクと免疫回避に触れ、「入院の減少というプラス面は感染率の上昇によって打ち消される可能性がある」との見方を示しており、これが各国政府が対策を急いでいる理由とも見受けられます。
スコットランドの540万人の保健記録に基づくエディンバラ大学の研究では、コロナ感染による入院リスクは、デルタ株よりもオミクロン株のほうが3分の2低いとされ、南ア国立伝染病研究所(NICD)の研究者がオンライン上で公表した研究も同様に、オミクロン株感染者の入院リスクはデルタ株を含む他の変異株に比べて70〜80%低いことが示されたといいます。
それでもオミクロン株が重症化が低いという結論を出すには、データが少なすぎるという側面も否定できません。そこで少なくとも感染や重症化リスクを抑えられると考えられる3回目のワクチン接種を急ぐことになる流れにあり、同時に水際対策を強化する動きも加速しているといえます。
オミクロン株が普通のインフルエンザ並みに重症化や死亡率が低く、新型コロナウイルスがインフルエンザ化しているかどうか結論を出すのは時期尚早でしょう。これまでのインフルエンザならたとえワクチン接種していなかったとしても、健康な人の場合は高熱が出ても1週間ぐらいで回復するパターンになるわけですが、そこまでいっているようにも見えません。
通常、これまでの危険なウイルスの流行は2年から3年は沈静化に掛かっていることから、来年1年間が勝負といえるかもしれません。その間、経済が持ちこたえられるのか、日常生活はいつ完全に取り戻せるのか、少なくともウイズコロナで油断は禁物ということだけは言えそうです。
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