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 日本でもようやく普及が始まったワクチン接種証明の衛生パス、欧州では完全に定着した感があります。同時に何が何でもワクチンを打たないと決めている人々は、あちこちで衛生パス提示が義務付けられているため、衛生パスの代用が認められているPCR検査証明書を見せている。

 ただし、PCR検査や抗原検査は、その効力が24時間と短いため、列車を利用してバカンスに出かける場合、出発前に検査が必須のなる。今は検査が有料なので大変だが、友人のワクチン拒否派の夫婦は検査のお金を払い、アルプスのスキーリゾートに冬の休暇で向かうという。

 仏内務省によると、国内でこれまでに11万件の偽造「衛生パス」が特定されたことが明らかになった。今夏からトータルで18万件となった。8月に本格運用が始まった衛生パスは急速に普及し、友人の一人はスマホの初期画面をQRコードにしている。町のあちこちでQRコード提示が求められるため、スマホを起動するとすぐに見せられるので便利だといっている。

 カフェやレストラン、バーだけでなく、美術館、スポーツ観戦、地下鉄などの公共交通機関の抜き打ち検査、スキーリゾートなど、衛生パス提示義務が課せられている場所は数知れない。つまり、衛生パスや検査陰性証明書なしの行動は大きく制限されている。

 そこでワクチン拒否派の中には偽造パスを取得しようという人もいる。偽造パスを発行するには、医師又は看護師の協力が必要だ。11月末にはバル=ド=マルヌ県の医師が220件の偽造「衛生パス」を販売した疑いで逮捕され、今も勾留されている。

 フランスでは偽造パスの売買や行使は違法行為として処罰される。また、偽造パスを所有している人が新型コロナウイルス感染症にかかった場合、医師がワクチン接種者と勘違いして、適切な治療をする機会を失うリスクがあることも指摘されている。

 報道によれば最近、偽造パスを所持する57才の女性が、オー=ド=セーヌ県内の病院で適切な治療ができず、重症化し死亡した例が報じられた。同種の犯罪捜査に関わる当局者は、衛生パスは提示された側がQRコードを読み取り政府の管理するデータベースで確認するので、偽造ができるのは医療関係者の内部の犯行がほとんどだという見解を示している。

 ダルマナン仏内相は、偽装パスの所有者が、「改心」してワクチン接種を受け入れる場合に、「恩赦」を適用するという案を支持する考えを表明している。政府は、オミクロン株の急速な感染拡大によって、新型コロナウイルス感染症による集中治療室の入院患者が、年末には現在の3000人から4000人に達する恐れがあると警告している。

 衛生パス普及で重い腰を上げた日本だが、この偽造パス問題は極めて重たい問題だ。人の命に係わる問題で、ワクチン接種や検査の陰性証明が偽造されれば、公衆衛生のリスク管理は大きく後退しかねない。ワクチン接種推進派は政府に対して偽装パスを販売した者への厳罰化を要求している。

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