lourdes aaa
   毎年600万人の巡礼者を集めるルルド

 フランスのローマ・カトリック司教会議は8日、カトリックの聖地、フランス南西部のルルドで聖職者による児童への性的虐待の犠牲者への補償基金を創設すると発表しました。財源は教会が保有する不動産の一部売却益を充てるということで想定されていたことでした。

 1950年代から現在までに聖職者による児童への性的虐待の犠牲者は33万人に上るとする衝撃的な調査報告書(ソーヴェ報告書)が公表されて1か月後が経ちました。カトリック教会の歴史で、これほどの醜態をさらした大スキャンダルにどう対処するのか、注目されていました。

 司教会議はルルドでフランスの司祭120人が集まり、5日から今後の対策が話し合われました。聖母マリアが出現し、癒しの泉が与えられたとされるルルドは、今でも毎年、世界中から約600万人の信者が霊的治療を求めて訪れる世界で4番目のマリア聖地です。

 ボーフォート議長は「われわれは個々の犠牲者への賠償の使命を達成するための具体的な手段を提示する」と会議の終わりに述べ、具体的な措置とスケジュールを示すとしました。小児性愛の犠牲者に対して教会が聖職者の管理ができなかったこと、社会的に隠蔽してきた「制度的責任」を負うことを明確にし、補償基金を創設することを明らかにしました。

 制度的というのは、罪が発覚しても法的に起訴されないように罪の隠ぺいを行う教会内の命令系統が存在したことを指しています。調査委員長を務めたジャン=マルク・ソーヴェ氏は、カトリック教会の「残酷な無関心」と非難したことに答えるものです。

 カトリックの場合は告解によって、罪の許しを請う宗教儀礼があり、通常は信者が聖職者に対して行う行為です。教会内での性的虐待問題をうけて、告解でもし児童虐待の罪が告白されたら、司祭はその絶対的な守秘義務を破って報告すべきだという議論が数年前から本格化しました。

 司法と罪の告白に対する守秘義務の関係は昔から議論になってきたことです。たとえば宗教における善悪の価値観や贖罪方法は司法の上にあるという考えは、法治国家ではありえないことですが、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教といった一神教では、国の法律より宗教戒律が優先されるという考えが、頭をもたげることは少なくありません。

 司教会議は、聖職者によって犯された犯罪の賠償のために信者からの寄付を充てることはできないとして教会が自ら資産を売却して保障に充てるとしています。当然のことでしょうが、時効の事例を含め、賠償の範囲をどうするのか難しい判断が求められるでしょう。

 2,500ページに及ぶソーヴェ報告書は、警察や教会関係者などの聞き取りにより、1950年代から現在までに聖職者により、21万6000人の未成年者の虐待の実態を詳述しており、カトリック学校の教師などの信徒による証言を含めると、その数は33万人に上ると指摘されています。

 特に多くの場合、時効をはるかに超えていますが、委員会は全ての犠牲者に教会は賠償金を支払うように求めています。ルルドの司教会議で初めて司教たちは教会が性的虐待に対して隠蔽の「制度的責任」を負っていることを公式に認めました。

 ただ、犠牲者団体は司教会議が考えている賠償の規模は十分ではなく、数千万ユーロ(数十億円)規模の賠償を要求しているようです。フランスの司教たちはまた、性的暴行を防ぎ、問題の司祭が起訴されることを確実にする新しい措置を計画していることを明らかにしました。

 フランシスコ教皇は同問題で加害者の聖職者を「サタン(キリスト教でいう悪魔)の手先だ」と発言し、全ての事件に「真剣に」取り組むことを約束しています。聖職者の妻帯禁止がいびつな聖職者の性の倒錯、性的嗜好障害を生んだとの指摘もあり、聖職者の権限が圧倒的なカトリック教会は大きな岐路に立たされています。

ブログ内関連記事
仏カトリック教会天文学的賠償 聖職者、教員、職員による性的虐待の組織的隠ぺいの波紋
伝統保守の国次々リベラル化 LGBT、妊娠中絶や同性婚合法化に動く保守的国々のなぜ
フランスから教会が消えていく