looking-for-a-job-g686ea90e1_1280

 「アメリカ連邦政府の最新データによると、米国では今年4月から8月までの間に自ら離職した人が2000万人近くに上り、前年同期から60%以上増えた」と今月18日付の米ウォールストリートジャーナル(WSJ)が報じました。

 トランプ政権最後の年となった2019年、労働市場が約50年ぶりの強さを見せたといわれた年の同時期と比べても12%も多い数字です。それも定年退職者による離職は含まれず、「離職理由は転職や大学などでの学び直し、家族の世話、休養などさまざまな理由で辞めた人のほか、同一人物による複数回の離職が含まれる」とWSJは指摘しています。

 仕事をやめる理由の一つはコロナ禍の長期で自分のしている仕事と生活について深く考えるようになり、そのリセットに動く人が増えているといいます。一方、企業の求人件数は増える一方で、人材確保に苦労しているという数字もあります。

 これは実は世界的現象でフランスでも人手不足が指摘される一方、仕事を選ぶ側は慎重になっていることが仏メディアで報じられています。労働市場はコロナ禍で確実に働くことの意義にまで踏み込む人が増えているといえそうです。

 そんな中、効果的な利他主義(Effective Altruism、EA)と呼ばれる社会運動に参加する人が増えていることが指摘されています。どうせ働くなら確実に社会に貢献できる仕事に就きたいということで、科学やデータを活用しながら、個人がいかに自身の時間や資金、スキルを使って最善のことを行っていくかというのがEAのアプローチです。

 特にアメリカでは若い世代がこの30年、徐々に「いかに稼げるか」ではなく「いかに意義のある仕事に就くか」に考え方が変化してきたという統計があります。GAFAの台頭でITと金融の勝ち組が莫大な利益を得る中、社会にダメージを与えても異常な利益追求を続けることに疑問を呈する若者が「人生を無駄にしたくない」と動き出した現象です。

 最近では、SNSの巨人、フェイスブックが新しいサービスであるインスタグラム・キッズの開発途上で、独自調査で子供に有害なビジネスモデルだと判明したにも関わらず、利益優先でその報告を無視して開発を進めている実態が、同社に在籍していたデータアナリストから告発され、注目を集めています。

 EAは、2000年末にオックスフォード大学の哲学者2人が考え出したアプローチで、2020年以降のコロナ禍で多くの労働者が目的意識や仕事の意義を再考する中で、改めて関心を集めているとされています。それも当初は金を稼ぐためにもうかるキャリアを求めるとか、生活向上に最も効果的な職探しに使われていたのが、今では社会に役立つキャリア構築が中心になっているといいます。

 実際、EAは非営利団体「80,000 Hours」を通じて、人々が自分の才能やスキルに合った社会に役立つキャリアを構築することを支援する目的に活動範囲を広げています。

 同団体は2011年、EAの生みの親の一人であるウィル・マッカスキル氏と、ベンジャミン・トッド氏によって設立され、40年間の働く人生のトータル8万時間を、どう有意義に過ごすかをテーマにしています。

 コロナ禍は、人はいつ死んでもおかしくないリスクにさらされていることを自覚する機会になりました。1度しかない人生、8万時間どころか、その半分で人生を終えるかもしれないわれわれにとっては、1日1日、1時間1時間が貴重です。

 人間は意義を求める動物です。それも人や社会の役に立ったと感じる時に何よりも喜びを感じるものです。子育ての喜びも人類の存続に貢献することに繋がっているという意味で2重の喜びがあります。特に人類に大きく貢献できる人間を生み出せば、その喜びは人一倍でしょう。

 人は1日の3分の1働いて、3分の1飲み食いし遊び、3分の1休むか寝るわけですから、人生の8万時間を有意義に過ごせるどうかは大きな課題です。食べるためお金のためだけに8万時間を過ごすのは、人間が金や物の下にある貧しい生き方です。

 EAによれば、アドバイスの結果、起業する人が多いといいます。逆にいえば意義ある人生を求めている人は生きるモティべーションが高く、向上心も強いといえるのかも知れません。このブログで何度か意義ある仕事について書きましたが、コロナ禍でさらに人は意義を求めるようになったといえます。

ブログ内関連記事
2019年、手段のはずのマネーや技術が目的化し制御不能の無秩序の入り口が見えた年だった
人生で本当の満足を得るには、自分に合った仕事を見つける以上に意義ある仕事を見いだすことが大切では?
アメリカ人が意味があると感じる職業ランキング上位は全てが人助けだった
転職時代 報酬やキャリアパス以上に重要な幸福追求というキーワード