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 欧米諸国にとっておもちゃのクリスマス商戦は、1年で最も収益が挙げられる時期。しかし、今年は世界中の店舗やネット販売でおもちゃが不足し、価格も高騰する可能性があり、業界には懸念が広がっています。原因は世界のおもちゃの8割を生産している中国からの輸送費の高騰にあるようです。

 英BBCや仏フランス2、米ABCなど欧米の主要メディアは、今年のクリスマスはおもちゃ不足と価格の高騰が予想されることを一斉に伝えています。最大の理由はコロナ禍後の景気回復でコンテナ船の需要が急上昇し、輸送に掛かるコストが平均なんと1年前の6〜7倍になっていることです。

 当然、ただでさえ中国から距離のあるヨーロッパやアメリカは、クリスマス消費が世界で最も多いにも関わらず、品不足になるのは必至です。すでにハロウィン商品にも影響を与えており、クリスマスはその比ではないと指摘されています。

 輸送費高騰にはコンテナ不足だけでなく、燃料価格の高騰もあります。無論、コロナ明けの異常な消費拡大という特殊な状況ともいえますが、中国での生産に頼るおもちゃ市場の現実に疑問符が投げかけられている声も聞かれます。とりわけ、温室効果ガスを大量に発生させる大型輸送船に批判が高まる中、世界の工場を中国に集中させるメリットに限界が来ているともいえそうです。

 米中貿易戦争が激しくなる中、トランプ前政権はアメリカが最大の輸出先である中国製のおもちゃに対して2018年秋に制裁関税を課し、それをさらに引き上げました。その効果は絶大でおもちゃ生産工場の本場、深センに工場を構える玩具製造大手「深圳南嶺玩具制品」は倒産しました。

 ベトナムへの生産拠点移動もこの数年進んでおり、インドも名乗りを上げています。とはいえ、中国がおもちゃ生産の世界の最大拠点であることは変わらず、米玩具協会によれば、中国は、年間280億ドル規模の米国の玩具市場で販売される製品の8割以上を未だに製造しているとしています。

 輸送コストの異常な上昇は今年に限るのことではないという専門家もいて、遠距離の生産拠点で安価に製造するビジネスモデルは、おもちゃ市場だけでなく、産業構造の変更に繋がる可能性もあります。

 コロナ前の2019年、玩具需要が過去最高に達する中で、米国のサプライヤーや小売企業は、陸・海・空の輸送路で発生する深刻な渋滞を切り抜けることに必死だというニュースが報じられました。当時、すでに欧米の玩具業界は、需要が供給を上回っている現実を認めていました。

 そこに今度は輸送コストの高騰、コンテナ不足も重なり、さらには近年指摘される中国の人件費の上昇もあり、消費の伸びは確実なのに、さらに供給が難しくなっています。子供の夢を打ち砕くわけにはいかず、フランスの業界関係者は「中国からおもちゃが届く日は勝利した感がある」といっています。

 中国の生産価格は過去にないスピードで急上昇しており、結果的に世界経済に悪影響を与えるのはおもちゃ業界だけではない話です。