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 国際通貨基金(IMF)の理事会は11日、世界銀行在籍時に報告書に記す中国の順位を不正操作した疑いがあるゲオルギエワIMF専務理事について「証拠不十分」で続投が決定されました。しかし、海外投資の重要な判断材料となる国際機関の指標に資金力を持つ中国が影響を行使した問題は後を引きそうです。

 同疑惑はゲオルギエワ氏が2年前にIMF専務理事に就任する前、2017年から最高経営責任者(CEO)を務めていた世界銀行時代に起きた疑惑。世界銀行が毎年発行する世界各国のビジネス環境のランキング問題です。増資を必要とする世銀に中国が協力する見返りに順位を上げるよう要求し、結果、順位が変更されたというものです。

 実はたとえば先進国が途上国や新興国を援助したり、企業が海外進出する際に世銀のビジネス環境に関する国別ランキング「Doing Business Report」は重要な指標。今回の疑惑は、世界銀行自体が内部調査を行い、報告書の公表を通じて明らかになった問題です。

 2018年版を準備中の2017年、世銀トップはキム総裁とゲオルギエバCEOでした。疑惑は世銀が増資に向け各国からの協力を得ようとしているタイミングで事件は起きました。前年の2017年版のランキングで、中国の順位は78位、これに不満を持つ中国当局は「中国の現状と異なる」と繰り返し世銀に抗議し、変更を求めていたといいます。

 そんな時期に、世銀の独自の調査で中国の順位がさらに下がって85位になる可能性が内務で流れ、その阻止のために、中国は上層部に圧力をかけ、結果、中国の順位が前年と同じ78位まで上昇したという話です。その裏交渉の中心人物がゲオルギエワ氏だったというわけです。

 旧東欧ブルガリア出身ゲオルギエバ氏は世銀CEOになる前は、世銀に勤めながら、欧州委員会で予算・人的資源を担当する副委員長として欧州連合(EU)でも活躍した人物。世銀では絶大な影響力を持ち、世銀の報告書にも影響を与える位置にいました。

 無論、IMFのトップである専務理事続投を検討する時期に噴出した疑惑だけに、背後に政治的力が働いた可能性も考えられますが、コロナ禍からの復興の重要な時期に、別の人物を探すのも至難の業だったことは確かです。

 実はIMFトップは、これで3代続けて疑惑続きとなりました。まずは元仏財相のストロスカーン氏は専務理事時代のホテル従業員への性的暴力をきっかけに売春への関与も表面化し、自ら辞任。後任の同じく元仏財相のラガルド氏(現欧州中央銀行総裁)は、最近亡くなった仏実業家のタピ氏の司法との係争に介入し、便宜を図った疑惑があり、証拠不十分で続投しました。

 ですから、ゲオルギエワし疑惑は近年では3度目の専務理事疑惑です。ただ、今回の疑惑の影響は、これまでとは比較にならないものです。なぜなら、世銀自体の信頼度を失墜させているからです。増資が常に必要な世界最大規模の世界銀行が協力する国からの圧力によって国別ランキングを恣意的に変更したとすれば事態は深刻です。

 世銀報告書は本来、金融界やビジネス界では極めて信頼度が高く、中立性、客観性、公平性、正確さが担保されていると見られてきました。そこにも世界支配を狙う中国の手が侵入していたとなれば、事は深刻です。中国は現在の世界標準を中国標準で書き換えることを目指している国です。

 世界標準で評価を得るために努力する日本とは大違いで、そもそも世界標準はアメリカが勝手に作ったとしか見ていない中国は、早くその書き換えを行いたいところです。残念ながら国際機関トップに汚職が当たり前の途上国出身者が少なくなく、世銀トップが歴代米国籍者だったのが発足以来、唯一ブルガリア出身者になった隙に中国はうまく利用したともいえます。

 ゲオルギエバ IMF専務理事は今年6月、中国人民銀行の副総裁の李波氏をIMFの副専務理事に就任させる提案を行ったばかりです。

 コロナ復興で、特に資金が必要な途上国にとっては、出資や投資の目安となる世銀報告書の信頼度の低下は、今後に深刻な影響を与えそうです。コロナ禍はさまざまな不都合な現実をあぶり出していますが、国際機関の腐敗の影響は大きいといえます。

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