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  パリ15区テアトル通りにあるEcole active bilingue Jeannine Manuel

 パリ市内で何度か引っ越した中で、15区のテアトル通りがあります。最近、公共TVフランス2で訪仏中のブリンケン米国務長官へのインタビューがあり、なんとも流暢なフランス語で答えている姿に驚かされました。それもテアトル通りにある学校に9歳から18歳まで通っていたのを知り、2度驚きました。

 無論、わが家が住んでいた時に、ブリンケン少年が在籍していたわけではありませんが、実はその学校に子供を通わせようと思ったこともありました。その学校とは、Ecole active bilingue Jeannine Manuel(通称、エコール・ジャニーヌ・マヌエルとかアクティブ・ビラング)と呼ばれる私立校です。

 日本の駐在員からの評判も上々で小中もありますが、パリの教育機関では、2019年時点で18年連続でフランスでトップの高校にランクされました。ブリンケン少年は、そこから米ハーバードに進学し、今では国務長官ですから、学校の評価はさらに上がったといえます。

 皮肉にも、同校を出た場合、フランスでは公務員になるのは教育課程上難しいので、官僚輩出に繋がっていないところはフランスらしいともいえます。テアトル通りに住んだのは別に子供を、その学校に通わせることが目的ではありませんでしたが、住んでいたアパートに日本企業の駐在員も多かったので関心もあり、学校説明会に参加したこともあります。

 アパートから歩いて5分の位置にあった学校は敷地は狭く、外からは学校とは思えない構えでした。ブリンケン少年がどこに住んでいたのかは知りませんが、父親(本当の父親ではない)はポーランド出身でリトアニア系ユダヤ人の大物弁護士だったというので、富裕層が住む15区、16区あたりに住んでいたのかもしれません。

 多様な文化的背景を持つ人々が住むフランスには、さまざまな種類の学校があります。たとえばブリンケン氏の背景はバリバリのユダヤ人ですが、ユダヤ人でユダヤ教の教育を受けさせたい場合はユダヤ人学校があります。なんとパリとパリ周辺だけでも約70校もあり、イスラム学校がゼロなのを考えるとユダヤ人が裕福さと市民権を得ていることが分かります。

 エリート教育に熱心なフランスでは、大学とは別にグラン・ゼコールという高等専門大学があります。歴代大統領はサルコジ氏を除き、政治家や官僚を輩出するグラン・ゼコールの国立行政学院(ENA)の卒業生です。話題を振りまいた日産の元会長ゴーン氏は理工系のエコール・ポリテクニーク卒業です。

 中央集権的なフランスは他の先進国に比べ、指導者教育を重視しており、大衆教育への意識は低いといわれています。フランス人と仕事をするのであれば、重要なことは権限の所在です。日本のような集団管理は存在せず、最終意志決定者に絶対的な権限が集中しています。

 それと過去にないほどグローバル人材が求められる時代に、初等教育からグローバル教育を受けている優秀な人材を輩出するシステムは、今の時代には大きな意味を持つのは確かです。無論、人と物、お金を運んだグローバリゼーションは、ウイルスも運び、リセットを迫れていますが。

 パリとその周辺にあるエコール・アクティブ・ビラングを含め、多くのインターナショナル・スクールからは、米ハーバード、英ケンブリッジやオックスフォードに進学する子弟も多くいます。彼らの多くが政財界のグローバルなリーダーとして活躍中です。

 無論、これらのインターはフランスの伝統的カトリック教育はないので、リベラルといえます。ブリンケン氏もリベラルな民主党の政治家です。そのため、頭脳優秀でも規範教育の欠ける側面もありますが、多くのグラン・ゼコールも事情は同じですが、グラン・ゼコールは愛国教育を行っていることです。

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