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 日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)が米中だけでなく、台湾、韓国、他の新興国に比べても進んでいないことが指摘されています。理由はDXに関わる人材不足、特にITのアウトソーシングで社外依存度が高く、社内人材が決定的に不足していることが指摘されています。

 さらに管理職クラスがその重要性を十分に理解しておらず、DXが経営戦略に組み込まれていないこと、結果としてDX投資が進んでいないことなどが挙げられています。

 無論、DXを成功させるには慎重さも必要ですし、成功率も決して高くない日本の状況の中では、様子見の企業も少なくありません。そもそもしっかりとした科学的根拠を持つヴィジョンやコンセプトを構築し、それを実行することの苦手な日本では、DXが掛け声に終わるケースも少なくないのが現状です。

 個を積み上げて結果を出す日本的慣習はDXには向きません。DXは全体像を明確にし、例外なくシステムそのものを総合的にリセットする必要があるからです。無論、DXには情報漏洩などのリスクもあります。

 しかし、それ以上に組織内の透明性を高めることや効率よく社内に蓄積されたデータを活用すること、閉鎖的な人間が作り出した縦割り組織の弊害の解消、スピード化、効率化、人材削減など、これまで改革が難しかった分野でDXは大きな貢献が期待されます。

 DXのハードルが日本企業にとって高いことは理解できますが、企業戦略の中の位置づけが明確でないことは、ポストコロナの時代には深刻といわざるを得ません。後発メリットで新興国などで最初からDXを組み込める企業との競争にも弱みになるのは明らかです。

 特に個人的にDX導入問題で関心があるのは、ダイバーシティ効果への期待です。人口知能(AI)とビッグデータの活用は、さまざまな業界で進んでいますが、最近のDX業界の調査でITを支えるAI技術、データサイエンスの最新研究で、問題視されているのが、同業界に女性が圧倒的に不足していることです。

 確かにIT業界は世界的に見ても男性が圧倒的に多いのが現状です。最近、システムエンジニア業界では、習得した技術で勝負でき、仕事が場所の自由度が高く、仕事の男女差がないことなどを理由に女性の参入が徐々に増えているといいますが、かなりの少数派です。

 DXをけん引するIT業界で女性が注目されているのは、アルゴリズムの分野です。目標地点に向う仕事の順序ややり方の意味を持つアルゴリズムは重要さを増しています。ところがたとえば検索に欠かせないアルゴリズムの決定にも人間が介在しています。

 アルゴリズムを支配すれば世界を支配できるという人もいます。たとえば中国のようなIT大国が戦略として検索サイトで中国に都合の悪いサイトを最初のページに表示しないようにアルゴリズムを設定すれば、立場を有利にすることができます。世界中で毎日膨大な情報が生まれていますが、その仕分けや優先順位を決めるのにAIに嗅ぎ分けさせることもできます。

 国も企業も検索エンジンの組み込まれるアルゴリズムに多大な関心を寄せています。そんなアルゴリズム分野も組織や人間の影響が大きいといえます。それを男性だけで構築するのか、それとも地球の半分を占める女性も協働して決めていくのかでは結果は大きく違ってきます。

 あらゆる分野でダイバーシティ効果が重要さを増す中、DXという新分野の専門家に女性が多数起用されることはDX効果を最大限引き出す上で重要だと思われます。

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