指ジェスチャー

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は今月、「絵文字を管理する団体は14日、人間の表情を伝えたり、テキストコミュニケーションに視覚的に別の意味を追加したりするグラフィック画像の新作を発表した」と伝えました。

 「さらにグーグル、 マイクロソフト 、 フェイスブック などのハイテク大手も、既存の絵文字をアップデートし、視覚効果の改善を図ったり、アニメーション、柔軟性、ヤギの鳴き声などの音声といった機能を新たに追加したりしている」と指摘しています。実際、フェイスブックのメッセージアプリ「メッセンジャー」は7月、31種類の音声付き絵文字を導入しました。

 SNSの発達でコミュニケーション手段は多様化し、ツイッターは短い文字数で短時間に投稿できるようになり、同二にインスタグラムなど写真や動画中心の視覚表現で普及し、「インスタ映え」という言葉もすっかり定着しました。投稿者は自分の感情や意図を的確に伝えるツールの幅が広がり、絵文字の普及もそのうちの一つと言えます。

 それも絵文と同時にヤギやコウロギの鳴き声など、サウンド文字がつけられ、より表現の幅が広がっています。絵文字つとサウンド文字はセットで拡大中です。そこで興味深いのはコミュニケーション分野で以前から研究されているノンバーバル(非言語)コミュニケーションの広がりです。

 特に異文化間コミュニケーションは、言語を学ぶだけでなく、非言語、つまりジェスチャーやサインを理解することが求められています。実際、言語で意図が伝わる率は30%といわれてます。たとえば通常合意のジェスチャーは頭を縦に振ると思われがちですが、イスラム世界では「ノー」の意味です。インドでは頭を左右に何度も傾けるのは喜びを表します。

 最近、日本の自民党の総裁候補の河野太郎氏が外務大臣時代、中国の王毅外相と握手する時、王毅氏がふんぞり返ったままなのに対して、河野氏は頭を下げながら握手したことを卑屈な態度と批判されました。実は中国では相手に対して頭を下げる行為は卑屈と捉えられ、丁寧さや謙虚さを表すものではありません。

 日頃、虚勢を張るのが普通の中国人は正式な場でも頭は下げません。これが中国の要人やビジネスマンが日本で頭を下げないのは異文化のノンバーバルコミュニケーションに対する無知と捉えられても仕方がありません。

 ところで、世界には万国共通の喜怒哀楽を表す表情があります。以下はどんな感情を表すのでしょうか。
画像5
 
 逆にいえば、国や地域によって表情が異なるということで注意が必要です。

 WSJは「ハイテク大手が絵文字の改良に取り組んでいる背景には、多くの人が在宅で仕事をするようになり、対面コミュニケーションの機会が依然として限られているという状況がある。そのため、ズーム(Zoom)などのビデオ会議プラットフォームだけでなく、絵文字の役割も大きくなっているとみられている」と書いています。

 さらに絵文字などの文字を作成する際の管理者となる非営利団体ユニコード・コンソーシアムに加盟している アドビ の書体デザイナー兼フォント開発者のポール・ハント氏は「人間のコミュニケーションには、常に視覚的要素が含まれている」と指摘する。つまり、文字だけのコミュニケーションでは、声のトーンやジェスチャー、顔の表情といった要素が失われるため、意思伝達の精度は激減するというわけです。

 すると今度は異文化を超えた共通の絵文字のルールが必要です。なかなかこれはハードルが高いといえます。絵文字によっては間違ったシグナルを伝える可能性もあります。

 とはいえ「アドビが2月に実施した7,000人を対象とする調査によると、全世界の絵文字ユーザーのうち、約46%がメッセージ送信の際に絵文字を使用する頻度はほぼ2回に1回と答え、66%が仕事で使用すると回答した」とし、「アルファベット傘下のグーグルは今年、3,521個の絵文字のうち992個のデザインを変更し、より親近感があり、文化の壁を越えて利用しやすいものにした」とWSJは伝えています。

 この分野の発達は当然の成り行きですが、リモートワーク時代への活用が広がり、さらに言語で縛られる知的階層を超えるツールとして、あるいは異文化間でもコミュニケーションの精度が高まることが期待されます。絵文字の発達はまだ初期段階といえるかもしれません。

ブログ内関連記事
ハイコンテクストの悪習脱却 忖度やズブズブの人間関係、事情通重視の弊害を捨てる時
最初に言葉ありきの米国 言葉の行間を読み本音を探るハイコンテクストの中国の交渉術
コミュニケーションの大前提 「異」をポジティブに捉え、ダイバーシティを楽しむ心が必要
コロナ感染の異文化考察 正体不明なウイルス対策に文化や国民性はどう影響しているのか