Office_redesign_around_Covid-19

 フランスでは9月の新年度を迎え、コロナ対策の新たなプロトコルを仏労働省が発表しました。それによると、職場はコロナウイルスの感染が拡大した昨年3月以前の状態にほぼ戻ることになります。学校も対面授業が大学まで開始されますが、果たしてどうなるか懸念の声もあります。

 まずは9月1日から民間企業のリモートワークを行うべき最低日数の基準は撤廃され、会社員は上司との相談のうえ、週5日すべてオフィスの勤務も可能になりました。すでに今年6月以降、民間企業のリモートワーク最低日数を軽減していましたが、7月時点で23%の会社員のみが1日以上のリモートワークを実施している状況という調査報告もあります。

 ただ、公務員に関しては週3日はリモートワークが法的に義務付けられており、これに変更がないようです。無論、オフィスワークが再開しても、建物内でのマスク着用義務、社員が1メートル以上のソーシャルディスタンスを取ること、オフィスの廊下などで人とのすれ違いを避ける道線を定めること、対面会議を避け、リモート会議を優先することなどの義務は変わらないとしています。

 これらはたとえ2回のワクチン接種が社員全員完了していても適応されるプロトコルで、感染者が見つかり、オフィスでプロトコルが守られていなかったことが発覚すれば罰金が科されます。

 8月31日から、レストランや美術館、スポーツ施設、また長距離路線の鉄道などで健康パスの提示は義務付けられていますが、そこで働く従業員のワクチン接種の有無の確認が議論があり、勤務条件には加えられていません。ただし、高速鉄道TGVの車内レストランや50名以上の集会では、健康パス提示が義務付けられます。

 ただ、このようにコロナ禍前にプロトコルを大幅緩和しても、たとえば持病がありウイルスの感染リスクの高い従業員に対して会社側はオフィスで個室を準備することや、勤務時間を配慮するなど物理的な予防対策を講じることが義務付けられています。政府は一定の条件を満たせば、感染リスクの高い従業員をオフィスで特別条件で働かせる場合は補助金も出すとしています。

 その他、今後、子どもの学校が閉鎖された場合、リモートワークも日中子どもの世話ができない従業員に対しては、給与額変更なしにパートタイムに切り替えることや、数日間の休職を申し出ることができ、その間も減収を国民健康保険が経済支援するとしています。

 ただ、新年度の学期開始で感染力の強いデルタ株の感染拡大が再び起き、学校でクラスターが発生するリスクや、外国旅行を含め、夏のヴァカンス先で密状態にあった人々が感染を広げるリスクは消えていません。

 フランスは来春の大統領選を控え、国民の不人気なロックダウンは極力避けたいところで、経済回復に向かい、コロナ前の状態に戻すことを優先する構えです。ワクチン接種を昨年12月に接種した医療関係者の3回目の接種の今月開始予定ですが、果たして結果はどうなるのか注目されます。英国も同じような日常が戻っていますが、予断を許さない状況です。

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