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  新疆ウイグル自治区観光の素晴らしさしか伝えないCGTN
 
 フランスでは、中国中央テレビ(CCTV)のフランス語の国際衛星チャンネル(CGTN)が放送されています。当然ながら、中国共産党のプロパガンダを流し続けているわけですが、40年前、ラジオから聞こえてきた北朝鮮の異常な雰囲気の宣伝放送よりは、はるかに洗練されていますが、内容は同じです。

 実は、このCGTNが公共の電波に乗って誰でも視聴できる状況が最近、フランスでは問題になっています。理由は香港や新疆ウイグル自治区への人権弾圧が世界的に認知される中、それを完全否定する放送が連日繰り返されていることや、その放送局にフランス人が雇われていることです。

 実はお隣の英国の通信規制当局は、政治的プロパガンダを問題視し、今年2月にCGTNの放送を禁止する決定を下しました。そこでフランスは、どうすべきかというわけですが、英国のような法律が存在しないため、議論が沸騰しています。

 CGTNは、フランス語を含む5つの言語で利用できる国際TVチャンネルで、たとえば新疆ウイグル自治区については、同自治区の経済発展や観光の魅力を賞賛する番組を流し続けています。それもキャスターや案内人はフランス人です。欧州ではフランス、ベルギー、ルクセンブルク、モナコなどがフランス語圏で、アフリカにも30か国くらいあり、フランス語放送の対象は大きいといえます。

 仏公共TVフランス2は報道番組は、この問題を特集し「イスラム教徒のウイグル人少数派に対する弾圧が非難される状況とは程遠い番組が流されている」と指摘し、さらには、そこに雇われているフランス人への取材を試みています。

 CGTNに雇われるフランス人のグランジャン氏(偽名と思われる)は「自分は、政治化されていないエンターテインメントのホストに過ぎない」とインタビューに答え、政治的質問には一切答えず、他の何人かのCGTNで働くフランス人は取材には応じなかったといっています。

 4年前まで中国外務省に採用され、北京のCGTNに勤務し、ニュースのフランス語翻訳の仕事をしていたエロディー・ブゾーさんはインタビューに答え「確かに、党とテレビ局の関係は非常に密接で、毎週火曜日に共産党指導部から人が来て打ち合わせを行っていた」との証言を紹介しています。

 英国は、CGTNの放送を禁じただけでなく、違反すれば罰金を科すとしています。中国政府は、この決定に強く反発し「不当な検閲だ」として決定を取り下げるよう要求しています。欧州の人権団体は「CGTNは中国の警察と協力して、中国政府に反対するジャーナリスト、弁護士、人権活動家を捕まえて拷問する手先になっている」と抗議しています。

 中国共産党にしてみれば、一党独裁の社会主義に反対する自由主義陣営も、根拠のない不当な社会主義国批判と、自分たちの統治体制の正当性をメディアで主張しているじゃないかといいたげです。中国から見た場合は、自由主義諸国のメディアは中国と同じにしか見えないところが恐ろしいところです。

 最近は、企業研修で日本人に交じって中国出身者も増えていますが、某日系大手観光会社の研修に参加していた受講者の一人に失礼を覚悟で「中国人は呼吸するように嘘をつくといわれるが、どう思うか」と聞いたところ、「そうですよ。それが何か悪いのですか」という答えが返ってきて、二の句が継げませんでした。

 われわれのジャーナリズムにとって、真実を伝えることは極めて大切なことです。それを覆い隠して政府に都合のいいように報じることをプロパガンダといい、メディアによるミスリード、洗脳は、あってはならない報道姿勢です。いい面、悪い面の両面を客観性を持って伝え、判断するのは視聴者や読者のはずですが、それをさせないのが中国政府の常とう手段です。

 フランスでは、CGTNはフランス・パリに本拠を置く通信衛星運営企業であるユーテルサットを介して放送されています。ユーテルサットはヨーロッパ全土だけでなく、フランス語圏の多いアフリカ、中近東、インドなどアジアの大部分、南北アメリカなどをカバーしています。

 このユーテルサットの利用に対して、現在、フランス政府の放送許可は必要ないため、英国のような法的阻止は難しいとされています。無論、情報の正確さと人間の尊厳の問題で違反があった場合、ユーテルサットに対して、政府は放送を遮断するように命じることは可能としていますが、中国は激しく抵抗するでしょう。

 今年に入り、英国を含む欧州は対中国強硬路線に転じたように見えますが、それは人権弾圧という欧州が絶対認めない価値観に触れているからです。ドイツのメルケル首相は今月7日、習近平国家主席と電話会談を行い、習近平氏はEUが、アメリカとは独立した立場で正しい判断を下すことを望んでいると表明しました。

 この要求に対してメルケル氏は、新型コロナウイルスワクチンの生産・供給、経済的協力の強化、気候や生物多様性の保護に関する措置といった国際的取り組みで協力して取り組むと応じたことを伝えています。親中といわれるメルケル氏は経済と政治を切り離して中国とは友好関係を継続したい考えです。

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