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 欧州連合(EU)から年末に完全離脱を予定する英国に対して、日本はEUとは別に貿易協定を結ぶ必要を迫られ、約3か月という異例のスピードで交渉は決着し、関係者を驚かせました。それも英政府がEUとの離脱協定を反故にする国内市場法を議会に提出し、EUと英国の関係が悪化する最中でした。

 日本は政権交代を控え、閣僚や担当者が変わる前の決着が急がれ、英国もEUとの貿易交渉が頓挫する可能性もあり、早急にポジティブな材料が必要だったとも指摘されています。ただ、日本とEUの経済連携協定(EPA)をほぼ踏襲する内容だったことを考えれば、スピード決着も不思議とはいえません。

 両国間の貿易額の輸出入総額は現在約4兆円といわれていますが、英政府の試算によれば、貿易協定の締結でさらに約2.1兆円の上積みが見込めるということです。EU離脱後に貿易協定がなければ、関税引き上げや通関手続きの複雑化で企業は大混乱に陥るリスクがあっただけに、日本の経済界も歓迎しています。

 無論、完全離脱を待たずして国益重視を露骨にするジョンソン英政権は、国際法に違反し離脱協定をねじ曲げてでも自国の都合を優先する姿勢を見せています。その意味で日本にとっては、対EUよりリスクは高いともいえます。「あの英国が協定を簡単に反故にすることはあるまい」とはいえない状況だからです。それに施行は相当先に話になりそうです。

 ビジネスは信頼関係の上に成り立っており、対英ビジネスで不安要因がないとは言いきれなくなりました。それに今回の日英貿易協定では投資紛争の解決手続き(ISDS制度)導入が見送られました。環太平洋連携協定(TPP)の参加に意欲を見せる英国には、同制度が導入されているTTPへの参加交渉のハードルは高いかもしれません。

 20年前から、グローバルビジネスに関わる欧州のビジネスマンたちは、環大西洋の同盟国が世界を主導する時代は終わり、インド太平洋の時代に世界経済の軸は動いたという認識で合意しています。その意味でもEUを離れる英国が英連邦の大国オーストラリアもある環太平洋に軸足を移すのは当然といえます。

 特に大英帝国時代に築いたグローバルネットワークを手放さない英国は、過去に覇権を持った環太平洋に商機を見出そうとするのは当然の流れです。しかし、アヘン戦争以降英国を嫌う中国も待ち受けており、共通の価値観を共有するアジアの大国、日本との関係強化は最優先課題です。

 ジョンソン政権にとっては、ブレグジットに理解を示すトランプ米大統領との間で有利な英米通商協定を結ぶことで、環太平洋の盟主の日本とアメリカとの新たな関係を築くことは、離脱後の英国経済にとって極めて重要です。とはいえ、頭の固い英国人はアジアに偏見がないわけではありません。

 未だに英国のビジネススクールでは、日本及びアジアを見下げる傾向は消えていません。大陸欧州に至っては、さらに現実離れしたアジアに対する上からの目線があります。インド太平洋に商機がある一方で文明的蔑視も存在します。

 もしかしたら遵法意識の低いアジアの途上国では、国際法を無視する横暴な態度の英国だからうまくやれるという皮肉な見方もできるかもしれません。ただし、大英帝国時代のようなアジア人蔑視の不遜な態度は許されないことも確かで、成功するかどうかは英国次第ともいえます。

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