G20,_July_8,_2017

 ヨーロッパに長くいると、この30年、明らかに産業革命時代以来、世界をリードしてきた米欧の大西洋同盟は終焉を迎え、今後の世界を決めるのは太平洋、アジアに移っていることを肌で感じます。今年は超大国アメリカと大西洋を挟んで対峙する中国の対立が世界経済に多大な影響を与えた年でした。

 パリのアメリカ企業で企画戦略部長を務めるフランス人の友人、アンドレは、アメリカに住んだこともあり「アメリカは西洋の一国と思っていたが、アジアとの関係の方がはるかに強い。リベラルなオバマ時代にアジアと距離を置き、ヨーロッパ人は喜んだが、うまくはいかなかった」と指摘しています。

 東西冷戦終結後の新たな世界のフレームワークづくりで、ヨーロッパ先進国が日本の参加し期待していたことについて、1990年代に連続して行ったヨーロッパの要人インタビューの内容をこのブログで触れました。しかし、ついぞ日本はアクションを起こさず、30年経って、ようやく経済連携協定(EPA)を締結しましたが、目的は経済だけで時すでに遅しという印象です。

 理由は、この30年でヨーロッパは地盤沈下が止まらず、大西洋の対岸のアメリカにも背を向けられ、背後からはロシアの脅威が迫り、中国の一帯一路に飲み込まれそうな状態だからです。近年、ヨーロッパも中国の覇権主義の正体を知り、ウイグル族や香港の騒乱への弾圧で対中感情は悪化していますが、疲弊する台所事情からすれば、中国マネーに喉から手が出そうな状態です。

 トランプ政権は、かつて世界を共に主導した同盟関係にあるヨーロッパに対しても関税圧力を掛け、北大西洋条約機構(NATO)の分担金の不公平を訴え、冷淡とも取れる態度をとっています。ヨーロッパ側もトランプ氏を嫌っていますが、発言力はありません。

 リベラルなヨーロッパは、オバマ時代には最有力のアメリカの助言役を自負し、グローバル化を推進し、多国間主義を広め、欧米の普遍的価値は安泰と思われました。しかし、それでもヨーロッパの地盤沈下を止めることには繋がりませんでした。むしろ、そのグローバル・リベラル思想を中国が逆手に取り、大変な状況に陥っています。

 慌てたアメリカが中国を抑えることに走る中、主戦場は太平洋に移りました。リベラルな夢見心地の多国間主義のヨーロッパを見捨てたアメリカは、本気で中国封じ込めに動き出しました。しかし、戦後のドイツ封じ込めがそうであったように、封じ込めは関係国の協力なしにはありえません。

 ここで太平洋では外せない日本が中途半端な態度をとれば、アメリカの信頼を失うことになるでしょう。今はアンチ・トランプで共和党と厳しく対立する民主党でさえ、対中政策では共和党と認識が一致しています。なぜなら、リベラル派にとっても中国の独裁体制や人権蹂躙は受け入れられないからです。この点ではヨーロッパも一致しています。

 ところが経済最優先の日本は、いつものように中国の顔色を伺い、習近平氏を国賓で招いて中国との関係強化に乗り出しています。とてもウイグル族弾圧や香港騒乱に強権発動する中国政府を非難するような空気ではありません。しかし、その態度こそ世界の日本への不信感を高めています。

 アメリカはすでに北朝鮮や中国におもねる態度をとる文在寅政権に対して、不信を露にしています。アメリカは一国でも、中国封じ込めに臨むと思いますが、日本の煮え切らない態度は同盟関係にヒビを入れる可能性があります。その意味で日本は調整役とか仲介役を自負する状況にはないと思います。

 インド太平洋地域の覇権争いが、今後の世界の行方を左右するといわれる中、日本がどのようなスタンスで臨むのかは重要な話です。TPPで指導力を発揮する日本ですが、経済だけでは覇権争いに決着をつけ、地域を安定化することはできません。確固たる筋の通った信念が必要です。

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