stop-4070152_960_720

 外交姿勢は、その国の文化や慣習、国民性の延長線上にあるといわれる。国内で競争を好み、負けず嫌いなアメリカは、外交でも勝ち負けにこだわる。最近はあまり聞かなくなったWin Winという言葉、支配欲や相手と優劣を競う本性が露骨さを増しています。

 面子の国、中国は、口では互恵関係といいながら、実は中華思想で支配欲が強く、国内のウイグル自治区のイスラム教徒の強制改宗を強行し、香港の自由も許さない姿勢です。支配するかされるかの歴史しかない中国は、国外に対しても姿勢は変わりません。

 アメリカの産みの親ともいわれ、島国根性と独立心が強い英国人はプライドが高く、大英帝国の繁栄を忘れない世代はブレグジットを当然と思っています。韓国のセウォル号のような沈みゆく欧州連合(EU)から脱出することで繁栄を取り戻そうとしています。

 英国に見捨てられた(その判断が正しいかは次の10年が決めることですが)欧州は、特別なエリート階級のEU官僚が大好きなルールづくりにこだわり過ぎて、その理想主義的ルールと現実のギャップが大きすぎて「地盤沈下が止まらない」(ウォールストリートジャーナル=WSJ)状況です。世界はEUが強調するルール最優先では動かなくなり、COP25も失敗に終わりました。

 しかし、最も深刻なのは日本だと私は考えています。一見、世界一の清潔で便利な国、洗練されたモダンな国に見えますが、この10年でかつてのように世界がアメリカ、EU、日本で動く時代は過ぎ去り、台頭する中国、外交力で手腕を発揮するロシアを前に、アメリカを除くEUと日本は主要プレーヤーでもなくなりました。

 国際政治の専門家やエコノミストにとって、日本はEU同様、沈みゆく国になりつつあり、国際社会でのかつての存在感はなくなろうとしています。

 WSJが紹介したリトアニアのリナス・リンケビチュウス外相の発言は的確です。「世界戦略における力の均衡は変化しており、その流れは好ましくない方向に向かっている。それはリーダーシップの不在と関係している。われわれがリーダーを持たないならば、常に守勢に回り、常に弱い側に立たされ、暗雲が押し寄せるのを待ち受けることになる」と述べています。

 つまり、中国共産党が支配する中国、プーチン大統領が強権を持つロシアなど、迅速な意思決定が可能な国が好ましくない流れを作る中、国連や民主主義の連合体であるEUは無力化しています。唯一リーダーシップを発揮しているアメリカが同盟国といさかいを起している今、10年前には想像もできなかった世界が拡がっています。

 そんな中、リーダーといえば意志決定者というよりは調整役という意味合いの強い日本では、過去、独自の意思決定で戦争を引き起し孤立したトラウマもあり、戦後は自ら主体的に海外に乗り出し、リーダーシップを発揮するよりは、大国の間で調整役に徹した側面もあります。

 しかし、それも国内で優れたリーダーというのは、力強いリーダーというよりは、組織の隅々まで気を配る調整能力の高い人間が選ばれ、「落とし所を知る」リーダーが好まれることと深く関係しています。私は大手日本企業の海外の進出先を取材した経験から、国内で評価の高いリーダーが必ずしも海外で評価されるとは限らない現実を何度も目の当たりにしてきました。

 今、日本はアメリカと中国やロシアが鋭く対立する中、トランプ大統領と良好な関係にある安倍首相が、習近平国家主席やプーチン大統領とも良好な関係にあることで、得意の両者の「架け橋」となり、仲介役で貢献しようとしているように見えます。

 しかし、リトアニアの外相が指摘するように、今必要なのは、調整役ではなく、リーダーシップです。日本人にはトランプや習近平、プーチンのようなリーダーシップの資質がある人間はいないといってしまえばそれまでですが、少なくとも日本自体はどんなヴィジョンを持ち、何をめざし、具体的にどんな戦略で望むかはっきりさせることが重要です。

 つまり、調整役だとか、アメリカの財布に成り下がっている時間はないということです。周囲の顔色を伺いながら自分を決めるような態度は、この混乱と激変の時代の中では何の役にも立たないと私は考えています。

ブログ内関連記事
欧米の対中感情悪化で向かえる2020年のグローバルビジネスはどうなるのか
原則論だけで発信力の弱い日本、特殊な思想で事実をねじ曲げる韓国 世界は日韓関係の本質を理解していない
30年間で変わった日本に対するイメージの変化 チャンスのはずなのに日本は腰が引けている
けっして成功とはいえない習近平の中国 ヴィジョンより見栄で眠れる獅子を起してしまったか