Ghozt_Tramp_-_Business_Communication_Duplicat_model

 非常に似た価値観を共有する村社会の日本では、企業のグローバル化も海外からみれば、それほど進んでいるようには見えません。グローバル企業の理想は世界の組織をワンカンパニーとして運営することなどといわれますが、実際には日本本社が世界に日本人を配置した自民族中心のエスノセントリックな組織を維持しているのが現状です。

 かつて日本の優れた製品をメーカーに代わり商社が世界に売ることから始まったグローバルビジネスは、現地生産を増やし現地に根ざした日本企業をめざすローカリゼーションが求められる時代になりました。その一方で生産拠点が途上国にシフトすることで、指導育成のために日本人が派遣され、グローバル化は行きつ戻りつ状態に見えます。

 それにこの数年、世界的にグローバル化がもたらしは格差拡大などの負の側面が表面化し、ポピュリズムが台頭し、グローバル化も足踏み状態です。とはいえ国内市場だけでは成長に限界があるだけでなく、劣勢に回る企業は資金力のある企業に買収される時代、うかうかしていると外国資本に乗っ取られる現実もあります。

 たとえば、約10年前、日本の大規模リゾート開発プロジェクトに関わった際、日本国内で初期資金調達が行き詰まる中、日本をあまり知らない海外の投資関係者からは「それなら台湾に知っている企業がある」とか「トルコの某企業なら可能かも」、あるいは「メキシコの財閥はどうか」などの話がありました。

 つまり、かつては日本が下に見ていたような国々に初期資金を出してもらい、そのプロジェクトの主導権そのものも彼らに渡すというような話でした。これはたとえば英国などでは普通に行われていることですが、日本ではかなり抵抗感のある話です。

 それはともかく、日本企業がエスノセントリック状態を少しでも抜け出すために、まずは世界展開で得た人的資源の積極的活用から始めるのが賢明だといえます。グローバル企業の強みの一つは、カルチャーダイバシティによるシナジー効果です。そこから新しいアイディアが得られたり、日本人だけでは得られなかった新たな可能性が生れるということです。

 多文化を背景に持つ人的資源を有効活用するためには、たとえば組織の見える化を高め、常に従業員が仕事に満足しているのか、文化的コンフリクトはないのかなど、彼らからのフィードバックを重視する必要があります。多文化ならではの特有な問題を解決するための具体的アクティブプランも必要です。

 ある日本企業では、世界的に優秀な人材を集めることはしたのに「うちでは意思決定は上層部が一方的に行い、議論はさせないようにしています。議論させると日本人と違って、彼らは勝手なことをいいだし、収集がつかなくなりますから」といって、不適切ともいえるマネジメントをしていました。

 結果は、外国人たちの不満が鬱積し、どんどん辞めて行ったそうです。トップダウンの意味が誤解されていることも原因していますが、何より議論することや、議論の中で意見が対立することに不慣れな日本人が多文化を生かせずにいる例だといえます。

 スイスのビジネススクールIMDが今年公表したWorld Talent Ranking 2017で、世界の高度技能者にとって魅力を感じる職場環境を提供する国として、日本はアジア11カ国中、最下位でした。この結果は深刻に受け止めるべきでしょう。つまり、日本には海外の優秀な人材が集りにくい現状があるということです。

 グローバル化に備えるため日本国内でも外国人を増やす動きはありますが、彼らを生かすために企業文化を進化させる努力は決定的に不足しています。その典型例が起用した外国人からのフィードバックを重視していないことです。その結果、日本人を含め、仕事を楽しめない職場になっているケースが多いのは現状です。

 企業自体がガラパゴス状態に陥れば、生き残るのも難しい時代、時間は掛かってもカルチャーダイバシティを持つ人的資源からシナジー効果を発揮するための丁寧な取り組みが企業を生かすといえます。ただ、英語で会議をやるだけではなく、異文化協業の豊かさを体感し、仕事を楽しめる環境作りが必要です。

ブログ内関連記事
日本はアジアで働きたくない国第1位とは何を意味するのか
働き方改革で海外の優秀な人材を惹きつけるには人事評価制度で公正さを重視する必要がある
異文化はおもしろい、多文化は楽しいがグローバルビジネス成功の秘訣
目標設定へのアプローチ思考を支配する文化の違いからシナジー効果発揮する