French_taste_of_wines

 フランス国営TV、フランス2の夜のニュースアナウンサーは24日、多少ニヤニヤした表情で、最新のアルコールに関する研究で、たとえグラス一杯のワインでも健康リスクを高めるという新たな見解を伝えた。ワイン大国に経済危機をもたらす可能性も指摘しています。

 なぜなら、フランスの輸出収益では、アルコール輸出は航空機エアバスに次ぐ2番目の規模で、この研究結果が世界を駆けめぐり、人々のアルコール消費が落ち込んだら、大変なことになるからです。7月から8月にかけて異常気象で豪雨や暴風、猛暑に見舞われ、葡萄に深刻な被害をもたらしたボルドー地方などは、悪い知らせの予兆だったではとも噂されています。

 最新の研究では、ワインやビールなどのアルコールは、たとえ少量でも人間の身体に害を与える。そのため、専門家たちは「アルコールは摂取しないことが望ましい」との専門家のコメントをフランス2は伝えています。癌や心臓疾患、肝硬変などのリスクを高めるのは明白というわけです。

 多くの研究者が集り、195か国で20年以上調査を行った結果「アルコールは量の如何に関わらず、有害である」との結論を得たというのです。同研究では毎日500mlの飲酒を1年間続けると、病気のリスクを0.5%高めるとしています。フランス2は、同研究は信頼性が高く、重要な意味を持つといっています。

 つまり、少量のアルコール摂取は心臓にいいとか、血流を良くするといった説は、明確に否定されたことになる。1994年のフランス政府が行ったアルコール過剰摂取予防キャンペーンでは、グランス2杯までのワインは健康に問題ないとしていましたが、今後、対応が迫られそうです。

 そこで考えられることは、煙草と同じ運命を辿るのかということ。今や煙草の吸引と肺ガンとの関係は医学的に明確にされ、その他の健康被害を含め、世界的に禁煙が奨励されています。煙草に課される税も鰻登りで、今やランチ1食の価格を超える勢いです。

 毎日、アルコールが原因で10万人が死に至っているという今回の研究は、フランスのワイン文化を根底から揺さぶるもので、私がこのニュースを聞いて脳裏に浮かんだのは、ワインだけでなくフランス料理にも悪影響を与えそうだということです。ワインなしのフランス料理は考えられないからです。

 実は20年以上前から、フランスには健康ブームが拡がり、今では有機農法などで作られた食品を専門に扱うコンビニスタイルのスーパーまで登場しています。ワインも有機ワインの成長はめざましく、成長産業として注目を集めています。

 ワインとチーズを基本に置くフランスの食文化を直撃する今回の研究発表にフランスの友人たちは「馬鹿げている」「今更習慣を変えるわけにはいかない」「それで寿命が縮まったとして仕方ない」「まったく飲まない選択肢は考えられない」などネガティブな反応ばかり。

 マクロン大統領でさえ、昼夜1回のワインは欠かせないと公言している一方、今後はノンアルコールのワインの開発が加速する可能性も指摘されています。世界に出回るワイン全体の20%を生産しているフランスのワイン収益は2017年、前年比8.5%増と盛況です。

 ワインのルーツにはキリスト教の歴史にも大きく関わっています。イエス・キリストは、自分の血と体を象徴するものとしてワインとパンを弟子に与えたとされ、ワインの多くが修道院で生産された過去があります。イエスは健康リスクのあるアルコールを与えたことになり、それも衝撃です。

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