今、世界の先進国の首脳の平均年齢は55歳、最長老はイタリアのベルルスコーニ首相の73歳、次が菅首相の63歳で、後は皆、56歳以下で、40代が2人もいます。さらに中国とロシアを見ると、胡錦濤主席が67歳、メドベージェフ大統領は44歳です。9カ国中、60歳以上の首脳はたったの3人で、確実に世代交代が進んでいることが伺えます。

 国の指導者は若ければいいというわけではありませんが、20世紀から21世紀の時代の変化は、ITの発達、グローバル化により、激変している状況は誰も否定できません。先進国で政治の世代交代を印象づけたのは、英国のブレア首相の登場でした。

 1990年代初頭まで、欧米諸国は冷戦時代、西側諸国とも呼ばれ、対ソ連のイデオロギー闘争に明け暮れていました。私は1990年代、何人もの欧州やアメリカの政治家にインタビューしましたが、彼らは冷戦が終結した後も、イデオロギーから経済の時代に変わったことを受け入れることに苦労していました。

 そんな中、英国の左派、労働党出身のブレア首相が登場し、欧州社会党大会で「今後は欧州の社会民主主義勢力も、古い社会主義を完全に脱却しなければならない」と演説したのを思い出します。当時、すでに英国では労働党の支持層は、ブルーカラーからホワイトカラーに移っていました。

 当時、社会主義色の強いフランスでも状況は変化していました。当時、インタビューしたパリ政治学院のブイッソー教授は「社会党も財政健全化を考えれば、福祉のことは語れなくなっている。左派は右派との違いを出すのに苦労している」と分析していました。その後、欧州の中道化が進んでいます。

 ヨーロッパはこの15年間、新しい世代の政治家を探し求めています。それはイデオロギー闘争にどっぷり漬かっていない新しい時代を開く政治家が必要だからです。2007年に登場したサルコジ大統領も、ブレア首相同様、フランスに新しい風を吹き込む政治家として登場しました。

 右派に属するサルコジ氏は「努力する者が報われる社会を作る」と主張し、まじめに働き、高収入を得る人びとが高福祉を保つために高額の負担を強いられている現実を変えようとしました。彼は「フランスがモデル国家などと自慢するのは愚かなことだ」と語り、変革を呼びかけて大統領の座に就いた人物です。

 その後、アメリカに40歳代のオバマ大統領が登場しました。イラク戦争に疲れた国民に、新風を吹き込む人物として、老練なマケイン候補を退け、若い初の黒人指導者が誕生しました。さらに、英国は今年、13年ぶりに労働党から保守党に政権交代し、43歳のキャメロン氏を首相に選び、大きく世代交代を遂げました。演説や記者会見でメモなしに話すことでも知られ、官僚の作文を読まない指導者です。

 若い指導者に共通するのは、時代の変化を察知する能力は無論のこと、その行動力がずば抜けていることです。キャメロン首相も自転車通勤し、地球温暖化で北極を訪れ、イラクを電撃訪問したりしています。さらに、意思決定の迅速さも今の時代には要求されます。そのためには情報収集力や分析力、状況判断能力が優れていなければならません。全ての問題にコミットし、適切な方向性を常に示していく必要があります。

 そう考えると、日本は非常に厳しい状況に見えます。世代交代も進まず、これといって国を任せられるような若い指導者も見当たりません。正直これが最も深刻な問題に映ります。