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◀「カレーの砂浜」1830年作

 

英国が誇る風景画家ジョゼフ・ターナーの展覧会が、パリのグランパレ国立ギャラリーで「ターナーと彼の師たち」展(5月24日まで)として開催されています。ターナーが生きた時代は、ターナーの作品を絶賛するよりも、戸惑いを与えることが多かったわけですが、同展覧会は、ターナーが過去の画家や同時代を生きた画家たちから、どのような影響を受けたのかを探っています。

 

絵画、版画、習作など約100点を集め、英国のテイト・ギャラリーで1月まで開催されていた展覧会の巡回展で、6月からはマドリッドのプラド美術館で開催されることになっています。言うまでもなく、ターナーは西洋美術史に初めて登場した本格的風景画家といってもよく、その表現も他の追随を許さない個性溢れるものでした。

 

慎ましい床屋の子として生まれたターナーは、13歳の時にトーマス・マートンに弟子入りし、その後、ロイヤル・アカデミー附属美術学校を経て、24歳でロイヤル・アカデミー準会員、27歳で正会員という早熟な画家でした。

 

パトロンに恵まれ、風景画家として、生活に困窮することなく、仕事を続けられた環境の中、1819年、44歳の時に憧れのイタリア旅行を実現し、画風は光と大気を描くことにより重点が置かれ、特にヴェニスに魅せられて、多くの名作を残しました。

 

ターナーは生涯を通して、ロラン、プッサン、ティツィアーノやヴァトーなどの作品に強い影響を受けたとされています。特に初期の頃は、17世紀のフランスの画家で、ローマで活躍したクロード・ロランの絵に大きな衝撃を受けたとされています。

 

ロランの空や光の扱い方、画面構成は、ターナーの画風に深い影響が認められる。ロランの時代に彼が主要テーマとした風景は、まったく主流とは言えないものだったわけですが、ロランの果敢な取り組みの遺伝子が、ターナーに受け継がれています。

 

さらには光の画家、レンブラントもターナーに光の扱い方、幻想的な画面構成に影響を与え、リチャード・ウィルソン、プッサンなどの画家たちに影響されながら、印象派の先駆け的なターナーの作風は確立していきました。

 

展覧会では、影響を受けた画家の作品とターナーの作品が並列して展示され、比較され、例えば、ティツィアーノの作品などが、ターナー作品と並び、その色使いや影の扱い方などを知ることができます。また、ターナーと同時代を生きた風景画家たちの作品なども観ることができます。