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 米国のサブプライムローン問題で、最も深刻な影響を受けたのは欧州でした。なぜなら、アメリカの金融商品を積極的に買う欧州金融機関が粗悪商品を十分な情報なしにつかまされたからと言われています。国際金融業界に関わる人なら誰でも知っていることですが、欧米の金融は、日本とは大きく異なっています。

  例えば、欧米では、銀行は人の金を「預かってやる」という態度で、「預からせていただきます」という姿勢はありません。貯蓄癖のある日本人は、せっせと銀行に金を運び、今では金融商品も積極的に買っていますが、日本の銀行は結果的にお金を集めるのに大きな苦労はしてこなかった。

  貯蓄癖のない欧米では、預けるのは安全と増やしたいという二つの理由しかない。安全目的では、むしろ、自分の金を安全に預かってもらうため手数料を支払うことになる。増やすためには運用が必要で銀行は、専門知識を用いて客を儲けさせてやるわけだから、「ありがたく思え」ということになるわけです。

  銀行は主に融資の利息を収入にしているわけですが、その元手の資金集めも人々がせっせとお金を運んでこないので、あの手この手の商品を開発し、しのぎを削って資金を集めています。融資も日本のように不動産の担保貸しのようないい加減なことはできません。

  プロジェクト・ファイナンスという言葉がありますが、銀行は融資にあたり、事業内容の分析能力が問われます。その意味で経営に関する相当な知識も必要です。

  私は、欧米で動き回る有名ブローカーと何度も仕事をした経験があります。ブローカーというのはいいイメージはありませんが、国際ビジネスには必要悪なものかもしれません。

  彼らの人脈とビジネスの可能性を見抜く能力、信用度というものが、巨大ビジネスを動かす場合が多々あるのを見てきました。そんな彼らの間で、ほとんどギャンブルに近いと思われる金融商品の話が飛び交っています。

  彼らの命は人脈と確実で豊富な情報量です。最近、あるブローカーから聞いた話ですが、結局、欧州の銀行は、十分な情報なしに、米国を信用して、サブプライムローンという粗悪金融商品をつかまされたという話です。アメリカ国内では、インサイダー情報が行き交っているので火傷の度合いは欧州ほどではないということです。

  金が金を生むという金融資本主義を欧州金融機関は、今回の火傷で学習しているとも言えますが、所詮、金融資本主義はリスクの高いギャンブルであることに変わりはありません。小さな努力で大金をつかむことを覚えた人間がどうなるか、歴史に教訓が残っているはずですが、なかなか学べません。

 写真はパリ西郊外にラ・デファンス