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 民主主義政治は、選挙にる国民の意向に大きく左右されるものです。岸田新首相が誕生し、新内閣が発足したことを受け、多くの海外メディアは国民は「安定重視を選択した」と書きました。ビジネスの世界ではアグレッシブという言葉がありますが、攻めの政治でないことは確かなようです。

 市場では河野太郎氏の大胆な経済政策実施に期待を寄せていたといわれますが、市場が岸田新政権にネガティブな反応を示している現象は今のところ起きていません。岸田氏は成長最優先から所得の再分配により格差是正という経済学者たちが主張する新たな経済政策を安倍・菅政権になかった特徴としており、具体的な施策が待たれるところです。

 政治家は国にとって何が必要かをかぎ取る収穫が必要ですが、たぶん、変化や不透明な状況に世界的に見ても不安やストレスを強く感じる日本人は、コロナ禍での不安や恐怖から、安定を求めていることを嗅ぎ取って岸田氏が選ばれたように見えます。(実際には国民が直接選んだわけではありませんが)

 一方、安倍長期政権の制作を完全継承した菅前政権のままでは、国民は満足しないことを嗅ぎ取り、若手や慣例となっている5回当選以下の閣僚人事で新しさを出そうとしたようです。しかし、意志決定権者は岸田氏であり、若い優秀な閣僚を起用しても、彼らを生かすも殺すも首相次第です。

 新しい所では、今回は自民党総裁選挙(実質的には首相選挙)が派閥の力学で動いていないように見えたことですが、閣僚人事は相変わらず、派閥への恩返しといういつも慣習が露骨でした。

 菅政首相の最大の決定は、コミュニケーション能力の欠落でした。過去のトップリーダーも大したコミュニケーション力をもたらい人物が少なからずいたわけですが、それが許されないのが今の時代です。特にコロナ禍のクライシスマネジメントの責任者としては、トップのメッセージがあまりにも大きな影響を与える中、菅氏のメッセージはあまりにも貧弱で弱く国民を不安にさせたのは事実です。

 では岸田氏はどうなのか。総裁選で変わったという指摘もありますが、基本的に明確なメッセージを発信する政治家ではありません。メッセージの背景には強く揺るぎない信念が必要です。それは海外に対しても絶対不可欠なものです。日本人が得意とする曖昧さは、今の時代には弱みでしかありません。

 言葉に責任をとるべき政治家は、慎重であるべきですが、政治は結果を出していくらの世界、新しいことに挑戦すれば、さまざまな抵抗に遭うものです。それでも不屈の精神であくまで結果にこだわって初めて評価されるのがリーダーです。

 これまで岸田氏の態度を見る限り、極力反発を避け、穏便にことを進めたい姿勢が目立ちます。自分の言動で相手が怒りを覚えれば、すぐに修復しようという態度が気になります。トップリーダーは批判を覚悟で態度を明確にすべき存在です。相手の顔色を伺うようなリーダーの成功例はありません。

 対中国、ロシア、北朝鮮などの外交で、顔の見える政治を実行するには、明確なヴィジョンとメッセージの発出は不可欠です。自民党内でバランスを取るような姿勢では通用しないでしょう。菅氏の失敗も長年癒着し、慣れ合い関係にある政官民を管理する職人技を得意としましたが、時代錯誤も甚だしいというしかありません。

 顔の見えるトップリーダーが必要な時代にあって、古い体質から抜け出せるかが国際社会の中で生き抜くカギを握っているように見えます。それに海外から岸政権を中道左派的に評されるのも気になります。

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