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 フランス南部最大の都市マルセイユで8月、麻薬を巡るギャング間の抗争で3人が殺害される事件が起きました。さらにその3週間前にはラヤンヌと呼ばれる14歳の少年が、同市北部の団地の外でスクーターに乗る若い男によって射殺される事件も起きています。同事件では他の2人の少年(うち1人はなんと8歳)が襲撃され負傷しました。

 今年2月にはパリ南郊外イル=ド=フランスのエソンヌ県で14歳の少年2人が、サン=シェロンとブシー=サン=タントワーヌのギャング間で数回の乱闘の末、死亡し、1人が重傷を負う事件がありました。同事件は、パリの15区の日本人駐在員も多く住む地区の近く、ボーグルネル地区で、ユーリーという少年がリンチされてから1か月後に発生したものです。

 連続して起きたギャング間抗争による10代前半の少年の犠牲は、フランスのギャング間抗争の深刻さを物語っています。ダルマナン仏内相によると、2020年にはギャング間抗争事件は350件にのぼり、そのうち186件はパリ首都圏地域で発生したとしています。

 衝突の増加は内務省の分析ではソーシャルネットワーク(SNS)の普及の影響が大きいといいます。特に、SNSによって当事者の中に明確な殺意が生まれ、抗争を凶悪化していると指摘しています。 さらに、これらギャングメンバーの3分の2は未成年者であり、司法当局によれば現在13歳から15歳の未成年者が全体の41%を占めているというのには驚かされます。

 10年間、この分野の専門家らは、政府の主張に反し、少年の非行と暴力事件が爆発的に増えていると警告していました。ブシー=サン=タントワーヌの事件では、15歳の未成年者が殺人罪で起訴され、その他に3人の未成年者が暴力を計画し、実行したとして逮捕起訴されています。

 実は未成年のギャンググループの背景に犯罪組織やテロ組織が関係している場合も多く、武器調達のための資金源や入手ルートを含め、当局の監視強化が進められています。

 当局が監視対象としているのは、フランスの伝統的ストリート・ギャングの進化型で彼らは通常、窃盗や麻薬密売を活動の中心に置く21世紀の新盗賊(ネオ・バンティスム)とも呼んでいるそうです。

 フランスの中央公安局(DCSP)は、ストリート・ギャングを次のように定義しています。「少なくとも3人以上の少年または若年成人で構成されるグループ」「彼らは、社会的、文化的、またはその他の理由で集まり、無秩序または意図的な方法で、反社会的、犯罪的行為を犯している」としています。

 さらに新盗賊について2007年、中央情報総局(SCRT)はレポートの中で「ストリート・ギャングが国土安全保障への潜在的な脅威と見なされる。それは彼らの暴力が犯罪組織やイスラム過激派と連携していることで、新たな現代の犯罪の脅威となっている」という見解を明らかにしました。

 つまり、今のギャングは日本の半ぐれ集団と違い、反社会的な犯罪組織やテロ集団と結びつき、麻薬密売の手先となり、時には利権争うでギャング間の抗争のために武装し、殺人も辞さない存在になっているということで、単なる非行少年グループではなくなっているというわけです。

 犯罪行為は高度化し、ネット犯罪やビジネスや中小企業の設立への投資を通じたマネーロンダリングを管理することもあると当局は指摘しています。大都市郊外のギャングは、組織化された人身売買、さまざまな都市暴力を実行し、組織化が進んでいるというのは、かなりの脅威です。そういうフランス映画がありますが、大げさではなくなっているのかもしれません。

 特に近年、都市暴力は車への放火、制服を着た警察官や消防士に対する暴力、パトカーへの襲撃、警察の行動を妨害する行為、または逮捕された友人を取り戻すことを目的とした暴動、身柄拘束中の警察署への投石、警察官を故意に傷つける行為などが目立っています。

 コロナ禍後、にわかにギャングの活動が活発になる中、フランスは彼らの脅威に身構えるしかない状況です。

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