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 パリ東郊外に住むフランス人の姪のルシルとエマは半年前に新型コロナウイルスに感染し、数日間、高熱や倦怠感の中で自宅で過ごし、回復しました。二人は兄夫婦の家で週末を一晩を過ごし、そこにいた彼らの叔父から感染したと思われています。兄夫婦も感染し、同じような症状で軽症と中等症の間くらいで入院はしませんでした。

 姪たちの年齢は20代前半、1人は働いており、もう一人は学生です。問題は回復した後、二人とも味覚と臭覚がない状態が続いていることです。二人は感染で自宅隔離していた時から味覚と臭覚がなくなり、内心、回復すれば、すぐにもとに戻ると考えていましたが、失った味覚と臭覚は未だにそのままです。

 二人とも食べることに執着がある方ではありませんが、それでも毎週末の親族や友人らとの食事会の習慣は楽しみの一つです。その楽しみは半減したままです。ルシルは「感じなくなった味覚と臭覚は戻ると思っていたので、半年経っても戻らないことに不安を感じている」といいます。

 二人は医者にも通っていますが、今のところ、コロナ後遺症の治療薬はないといわれ、適切な治療は受けていないといいます。「怖いのは食べ物が腐っているかどうかが分からず、この前は自分で料理を作っていて、焦げている匂いが分からず、失敗した」と言っています。

 彼らは火事が起きても気が付かないとか、食べ物に異常があるなど、危機を察知するのに必要な臭覚と味覚を失っている不安にさいなまれており、特に一人でいるときは恐怖に感じるといいます。半年前、フランスの1週間の平均新規感染者数が2万人を超えていた時期、若者は感染しない、感染しても軽症で大したことはないと軽く考えていたといいます。

 確かに症状は軽く、回復も早かったのですが、後遺症は彼らに重くのしかかっています。専門家は世界的に見てもコロナ後遺症についてはデータが充分でなく、軽症・中等症患者で味覚と嗅覚の障害を訴えた人は8割に上り、他の症状が消えて2週間以内に少なくとも25%が味覚や嗅覚を取り戻したというデータはあるものの、症状が続く場合の期間の正確なデータはないとされています。

 臭覚と味覚は動物が生存するためには欠かせないもので、人間にもそれはいえることでしょう。生きていく上でリスク回避に大きな影響を与えることが考えられます。他界した母も高齢化とともに味覚や臭覚が弱まり、恐怖を感じると訴えていました。

 世界中で感染力の強いインド型デルタ株が蔓延する中、世界一ワクチン接種が進んでいるイスラエルでは3回目の接種が始っていることが伝えられています。若者の多くは重症化はしないと考えているようですが、今は乳児にまで感染が広がる事態が生じており、後遺症も深刻です。

 自分の身辺で発生した後遺症を見て、改めて今回の新型コロナウイルスの脅威を感じざるを得ません。彼らは大好きな和食を食べても何も感じないそうです。ルシルは「うつ病になるリスクも感じている」「障がい者になったように感じる」といいます。後遺症が心も蝕んでいるのは確かです。

 新型コロナウイルスは未だに発生源も正体も正確には分かっていません。1年半以上のパンデミックの経験から学習できることも限りがあります。とはいえ、分からないのだからワクチンも打たずに軽視するという姿勢も疑問です。やれることは何でもやるという姿勢が重要だと思います。

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