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 コロナ禍のリモートワークで田舎暮らしが実現し、ハッピーライフを手にした人がいる一方、働く人が国内に限定されなくなったことで会社側が外国に人材採用を広げた結果、職を失った人も少しづつ出てきているようです。リモートワーク時代の新たな課題というべきでしょう。

 たとえばフランスで正規雇用すると社会保障税や失業保険料など負担が大きく、さらには一旦雇用すると簡単に解雇できない労働法が存在します。それが中国や東南アジアの高いスキルを持った人材を現地で雇えば、低いコストで高いスキルの人材を確保でき、雇われつ側もフランスに引っ越す必要がありません。

 無論、現時点では100%リモートワークの職種は限られていますが、デジタル化が進めば可能性は広がるでしょう。ただ、キャリアを積むことや雇用条件に敏感な優秀な人材を確保するためには、彼らが納得する雇用契約を提示する必要があります。そのため労働争議の扱いも今後、複雑化するでしょう。

 特に先進国は労働コストが高いため、コストが比較的低く抑えられる新興国、途上国の優秀な人材を求める傾向が強まっています。これまでは生産拠点の移動で空洞化が起きていた先進国は、高いスキルの人材の海外採用が増え、先進国で失業率が高まり、新しい形の空洞化が起きるかもしれません。

 無論、そのためには何千キロも離れた異文化環境で暮らす社員の会社に対するエンゲージメント、働くモチベーションや仕事へのコミットメント、情報漏洩リスク管理など、多くの課題はありますが、今、次々と欧米のビジネススクールではリモートワークでの生産性向上、効率化、リスクマネジメントの研究も進められています。

 一方、必要性の低い長距離移動の時間とコストは抑えられる一方、直接対面でなければ結果を出せないこともデジタル化が進んでも継続的に存在するはずです。さらに海外赴任などの物理的な移動の必要がなくなったとしても、異文化の壁は残ります。 

 コロナ禍の巣篭り状態の長期化で、ビジネスの世界からグローバルという言葉が消えました。結果的に異文化への関心も薄れ、今は多くの人が視野が狭くなっています。会社も海外にビジネスを拡大できず、人を送り込めないためにグローバル人材育成の必要を感じなくなっています。

 しかし、デジタル化は身体的な移動は少なくなったとしても、確実にグローバル化は進み、多文化協業の機会は増えています。身体的接触はなくても国際業務が消えたわけではありません。テレビ会議やメールでのやり取りは逆に増えており、そこでの異文化間コミュニケーションのスキルも向上の必要性も高まっています。

 一方、会社側はリモート採用に注目が集まっており、コロナ禍で採用の常識は大きく変わり、候補者と一度も会わずにオファーを出すのも珍しいことではなくなりつつあります。ただ、それが海外となるとさらに難しい課題もあります。

 数年前に会った大手日系電機メーカーの海外人材採用担当者は「月に3回は海外出張して面接している」といっていました。それが今ではリモート採用に切り替わっているそうです。仕事の適任者を見つけること、チームにふさわしい人材を見つけることは、リーダーの意思決定の重要な部分です。

 まして、それが異文化となれば、国内だけの経験値は役に立ちません。その国の人の意見など複数のプラットフォームを活用することも必要です。採用活動が場所に制約されなくなったため、より多くの人材プールから人を選べる選択の可能性が広がった反面、採用の不確実性も高まっています。

 今後は、あるプロジェクトのために期間限定で採用する雇用形態も増えるといわれています。その場合は人材採用担当者だけでなく、チーム全員が新しいメンバーを探す際の面談に加わることも有効といわれています。さらに高度技術者人材採用では、長期の試用期間も必要です。

 どんな人材を探しているのかを採用する側が明確にしておくこと、その詳細を求職者に早い段階で提示することも重要です。情報が多ければ多いほど双方の判断に役立つからです。今は特に業務が複雑化し、チームで結果を出す仕事がほとんどなので、リモートワークで協業スキルの重要さは変わりません。

 ポストコロナは働き方に大きな変化をもたらすことが考えられますが、そこでも重要さが変わらないのがコミュニケーションスキル、特に異文化間のコミュニケーションスキルにあることは間違いない事実です。

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